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日本サッカーの生きる道―日本が世界一になるための真のポテンシャルを読み解く(前編)

text by 西部謙司 photo by Kenzaburo Matsuoka

日本選手はテクニックが高い?


日本人選手はテクニックが高いと言われることが多いが…【写真:松岡健三郎】

 これもYESとNOの両方の側面がある。

 テクニックとは何かを再定義すべきなのかもしれないが、単純に止まった状態でのボールタッチや、プレッシャーがゼロの状態でのボール扱いの巧さに関しては、世界でもトップクラスかもしれない。

 これは試合前のウォーミングアップを見るとわかりやすい。CL出場クラスの強豪チームと比べても、ほとんど遜色ないはずだ。

 ところが、試合では相手のプレッシャーがあり、さまざまな要因が絡む。バスケットボールのフリースローのような技術をクローズドスキル、試合の流れの中での技術をオープンスキルと呼ぶ。日本選手のクローズドスキルはハイレベルだが、オープンスキルはそれほどでもない。決して低いレベルではないが、クローズドスキルほど高くはない。

 それほどプレースピードが上がらない後方でのパスワークにおいて、日本選手のプレーはおおむね正確だ。課題は、相手ゴールに近い場所での精度であり、動きながらのテクニックだと言われている。

 ただし、香川真司のように、動きながらテクニックの上手さで違いを作っている選手もいる。清武弘嗣もヨーロッパに行けば、この点では同じ評価を得られるだろう。

Jリーグの戦術は遅れている?

 どこと比べるかにもよるが、CLクラスなど「世界トップクラス」を比較対象にしているなら一般的にはYESだ。それは指導者がCLなどゲームを見て、それを参考にしたり、模倣するので、リーグの開催期間から言っても半年から1年の遅れは必ず生じるからだ。

 一方で、ヨーロッパの流れとはあまり関係なく独自路線をとるチームに関しては、むしろ進んでいると言えるかもしれない。

 サンフレッチェ広島、浦和レッズ、京都サンガといった独自の戦術でプレーするチームがJリーグには存在する。もし、ヨーロッパのクラブがそれらを参考にして、追随する動きが出てくれば「進んでいる」ということになるだろうし、どこにも影響を及ぼさなければ「ガラパゴス化」と括られるかもしれない。

 比較対象をCLという世界トップクラスに限定せず、例えばJ1とフランス・リーグ1を比較すれば、Jのほうが戦術的なバリエーションは多く、平均レベルでもほとんど差は見られない。大雑把に「世界」という括り方をするなら、遅れてはいない。

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