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香川真司 11年前

衝撃的なハットトリック。『夢の劇場』で本来の輝きを放った香川真司

text by 河治良幸 photo by Kazuhito Yamada

ポジショニングで相手に揺さぶりを掛けた香川

 典型的なサイドアタッカーではない香川は、もともと中に入ってボールを持とうとするが、ノーリッジが形成するFW2人、MF4人、DF4人の綺麗な3ラインのゾーンの間にうまくポジションを取ることで、守備ブロックの中でもパスを受けやすい状態を作っていた。

 両チームとも中盤がフラットな[4-4-2]を採用し、“鏡”と言われる対の関係になるが、香川だけは相手DFとMFの間のサイドから少し中に入ったところで細かく動き、相手の守備に揺さぶりをかけていた。

 相手のセンターバック2人(バソングとターナー)はルーニーとファン・ペルシー、セントラルMFのジョンソンとホウソンはキャリックとアンデルソンとほぼマッチアップの関係になっており、香川に意識を割きにくい。

 そこで本来は右サイドハーフのスノッドグラスが中に絞って香川のオフ・ザ・ボールをチェックしたいところだが、ゾーンのバランスと適度な距離感を維持しながらエブラの上がりも監視しなければならず、香川を厳しくチェックすることができなかった。

 そこで香川は普段以上に中のポジションを維持しながら、キャリックやアンデルソンのパスをブロックの中で呼び込んで、チャンスの起点となった。いざパスを受けた時には相手が激しく当たりに来るため、狭いゾーンの中で何度かボールタッチやパスがズレたところを奪われたが、こうしたところで多くボールを触ることで、周囲の効果的な動き出しを促していた。

 FWのファン・ペルシーが下がった後半21分からは[4-2-3-1]のトップ下にシフトチェンジしたが、今度は中央のブロック内で細かく動き、時に引いてセントラルMFとパスを交換しながら、高い位置にボールを運んだら再びブロック内に入ってパスを引き出し、アクセントになるという動きを繰り返していた。

 狭い守備ブロックの間で正確にプレーできる選手はプレミアリーグにおいて少数であり、ファーガソン監督が惚れ込んだ香川の才能の1つだろうが、その特徴をうまく発揮し、味方からパスが出て来たというのは今後に向けても明るい材料だ。

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