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日韓16チームによる相互錬磨を通じ、大学サッカーのレベルアップを図る

text by ひぐらしひなつ photo by Masaru Goto

プロ志向の選手は減少傾向にある

──プロを目指す大学生選手は減少傾向にあるのではないでしょうか。大卒でJリーガーになり、1年後には戦力外となるケースも、しばしば見ます。カテゴリを落としてサッカーを続けるケースもありますが、そこから一般企業に中途入社するのは難しいですよね。進路指導についても慎重にならざるを得ないのかと思います。

「実際、プロ志向の選手は近年、減ったような気がします。以前は『とにかくサッカーしたい』という選手が結構いたんですが、最近は『もうちょっと夢を持ってやればプロに行けるのではないか』と感じる選手でも『いや、サッカーは大学まででいいです』ということが増えました。

 本人がプロへの道を進みたがっていて、契約に至る可能性がありそうな選手については、早い時期から練習参加させたりもしますし、ちょっとプロで続けていくのは厳しいかなと感じる選手には、人生は先が長いのだから就職の選択肢も考えた方がいいんじゃないかというアドバイスをします。

 その上でどうしても諦め切れないというのであれば、チャレンジさせる。諦めるにしても本人が納得しなくてはならないですから。あとは仕事をしながらでもサッカーが出来るというところで、社会人チームに進ませた選手もいます。僕は割と手堅いというか、先のことを考えるタイプですね(笑)。保護者の意見と逆のアドバイスをすることも多いです」

──大学の指導者としては、やはりプロ選手を育てたいと考えるものなのですか。

「僕の場合は、本人がプロになりたいと考えているならば、それをお手伝いするのが我々の仕事だと考えています。プロになれる選手がいないからダメということではないと思うので、プロ選手を多く輩出したいというものさしは、自分にはありません。ただ、サッカーの強化を目指していますから、そこを追求しますし、選手たちの力を伸ばしていく義務があると思っています。

 その先の道として、プロに進む以外はダメかというとそうではない。僕自身も元プロ選手でも何でもないので、逆に言うと『それがすべてじゃないぞ』という思いもある。大学まで好きなサッカーをやらせてもらっているのだから、今ここでやれること、やらなくてはならないことを一所懸命やって、自分がどうやって生きていきたいか、この4年間で目標を見つけろと伝えています。

 なかなか『これがしたい』というのがなくて、入学当初からそれを考えている学生は、ほとんどゼロに近いですね。何となく惰性で過ごしている子も結構いるので、そういう時間がもったいないんだという気づきを与えるためのアクションを起こそうとはしています」

──大学というのは、少し昔の言葉で言えばモラトリアムですからね。

「また、我々は『頑張れば何とかなる』という世代だったと思うんです。今の子たちは『頑張ってもどうにもならないことがある』というのがわかっているというか、そういう世の中で育ってきているんです。熱くない。頑張って目標が叶う率と叶わない率、それ自体は昔と大して変わっていないのに、昔は『頑張れ頑張れ、頑張れば何とかなる』って言って、そこに関わる人たちのアプローチもあったし、手助けもあった。

 現代は、いろんな人から支えられているという感覚が持てない、持ちにくいんでしょうかね。どうせやってもダメでしょって感じで当たらず障らずで、自分のために周囲の人が一所懸命になってくれているということに気づけない。さみしい限りです」

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