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連載コラム 11年前

カズ、そしてキングファーザーのブラジル――第1回、わかりにくいリーグ構成の謎

text by 田崎健太 photo by Kenta Tazaki

キング・カズの原点を訪ねて

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【写真:田崎健太】

 ブラジルで話されているポルトガル語は、ポルトガルのポルトガル語と発音が違っている。例えば、「te」は「チ」、「L」を「ウ」と発音する。フットボールは「Futebol」と綴り、「フッチボウ」となる。フッチボウと柔らかく発音されるこの競技は、サッカーともフットボールとも違っているように感じた。

 すでに多くのブラジル人選手が欧州の著名クラブに移籍していた。それにも関わらず、才能ある選手が次々出てきており、良質なサッカーを保っていることも驚きだった。

 そんな感想を納谷さんに話すと、「そうだろ?」と頷いた。この日、ぼくは彼と4時間ほど、サッカーの話を続けた。彼はサッカーがとにかく好きで、ブラジルのサッカーについてならば延々に話し続けられるようだった。

 そんな彼を見ながら、ぼくは彼の息子、三浦知良のことを考えていた。三浦知良という選手は決して飛び抜けた運動能力の選手ではない。身体も大きくない。確かに足技は巧みではあるが、圧倒的ではない。しかし、彼は特別な選手だった。彼を特別な選手――“キング・カズ”となる過程、ブラジルにその秘密があるのではないかと思っていた。

 この“ザ・キングファーザー”に導かれて、ぼくはフッチボウに惹きつけられるようになった。

 97年から1年間、ぼくは納谷さんにアパートを借りてブラジルを中心に南米大陸を放浪した。その後も年一度程度、毎回二、三週間ブラジルを訪れている。たまにブラジルに行った回数を尋ねられると困る。

 一度パラグアイに行って戻ったり――あまりに何度も訪れたので、ある時期から数えるのは断念していたからだ。期間にすればこれまで延べ2年間ぐらいはブラジルに滞在してきただろう。

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