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連載コラム 11年前

元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 第3回・監督としてのデビュー。チームマネジメントの葛藤と覚悟

3月20日 On the pich

 千葉県選手権3位決定戦。対明海大学戦。

 準決勝から中2日。3位までは次のラウンドに進むことができる。昨年はここで敗退しているだけに、早速昨年と比較される状況に追い込まれた。

 天皇杯は地域リーグのチームにとってその名をアピールできる大事な大会でもあるので、大きなプレッシャーを感じていた。

 環境の変化、慣れない仕事、大きな重圧の影響は顕著に表れるもので、試合前日くらいから首がまったく回らなくなり、試合当日は背中から、首、こめかみ付近が激痛に襲われていた。現役時代、どうしようもない時にだけ飲んでいた痛み止めを監督になってから服用するとは思わなかった。

 こういう時は多くのことが計ったように連鎖するものである。アメリカにトライアウトに行った時などにも、驚くほど困難な状況が重なり、うまく対処できる時もあれば、その逆もある。

 追い込まれた時、契約獲得の岐路、勝負の分かれ目といった重圧の中で大事な決断に迫られる瞬間がある。そして、それは必ずと言っていいほど突然訪れる。

 この日もそうだった。スタメンを予定していた選手が試合会場がわかりづらかったこともあり3人も遅刻をしてきた。

 その中には替えのきかない、この状況なら喉から手が出るほど使いたい選手もいたが、一人になってしばらく考え、全員スタメンからは外すことにした。

 勝負の神は細部に宿る。責任を負い、リスクを覚悟できた時、これは自分の中の選手時代の経験則だが、結果はいい方に出ることが多かった。逆に安易な考え、思いつきから何かを手にすることは少なかったように思う。

 試合は前半1-0。後半早々に追いつかれ、1-1。残り30分、残り20分で交代カード1枚ずつ切ると、そこから試合が一気に動く。なんと2人目の交代選手が10分の間に2得点。終了間際にもゴールを奪い、最終的には5-1というスコアになっていた。

 終わった後にこの試合のヒーローに話を聞いてみたが、そんな経験は今まででも初めてだったという。

 試合後は首の痛みを感じつつ、不思議なこともあるものだと、改めて次のラウンドに進めた安堵感に浸っていた。

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