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連載コラム 11年前

元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 第4回 波乱続きのリーグ開幕戦

悪い状況は重なり、選手バスが渋滞に巻き込まれる

 しかしながらさらに悪い状況は続く。

 後に出たはずの自分達だったが、とっくに出ているはずの選手達のバスが未だに到着していない。慌てて電話をしたところ、運転手が高速の出口を間違い、さらに渋滞に巻き込まれたという最悪の報告を受けた。

 さすがにそれには自分も怒りを抑えづらい状況だったが、何かを初めてやるときには色々なことが起こるものである。バスの手配、タイムマネジメント、リスク管理、この試合運営の部分は自分も素人だったので、やはり見通しが甘かった。

 Jリーガーだった時代ではすべてがその道のプロ達によって効率的に分担され、確実に、着実と準備が行われている。このような状況になって今までの環境のありがたみを身に沁みて感じることとなった。

 70分前にはマッチコミッショナー、審判団、相手チームの監督、理事とでマッチミーティングがあるが、その時には自分とコーチだけしか居らず、ユニフォームもないままその状況に頭を下げながらミーティングは行われた。

 選手が到着したのは60分前。実に車中に4時間近くいたことになる。試合前の軽食もとっておらず、選手は皆疲弊し、浮かない表情をしていた。このような状況でどのような声をかけるかは迷ったが、まず選手達を狭いロッカールームに集め、次のように話すことにした。

「プレシーズンの出来、昨日の関東リーグの他チームの試合を観て、自分はVONDSの今シーズンでの昇格を確信している。間違いなく昇格できる実力がある。でもそのためにはいくつも大きな壁を、皆の力を合わせて乗り越えていかなくてはいけない。

 こう考えよう!今日まずその一つ目の壁が目の前にきた。待ちに待った開幕をなんでこんな風な形で迎えなくてはならないんだ。正直自分もそう言いたい。でも文句を言うのは簡単で、それは何の解決にもならない。うまくいかないこと、思い通りにならないことは、受け容れ、今からできることをしっかりやる。それが、昇格という目標を達成するには必要な考え方だと思う」

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