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アジア 10年前

地元ファンは大きな失望感だが――。小野伸二の豪州クラブ退団が現地で完全スルーされた理由

text by 植松久隆 photo by Taka Uematsu

在豪邦人は「とにかくショック」

地元ファンは大きな失望感だが――。小野伸二の豪州クラブ退団が現地で完全スルーされた理由
サポーターのクラブへの熱い思いがぶれることはない【写真:Taka Uematsu】

 サポーター騒動のゴタゴタで、結果的にその「仮契約」報道が大きく取り上げられなかったのはラッキーだったと思う。もし、これがオーストラリアでも報道されていれば、熱いパッションでは人後に落ちないWSWサポーターのこと、チームの勢いがそがれ、パフォーマンスが上がらなくなったときに、クラブのレジェンドであっても小野に批判の矛先が向かないとも限らないからだ。

 ただ、オーストラリア随一と言われるWSWの熱いサポーターでも、小野の退団に関してはそれほど感傷的にはならないだろう。彼らのほとんどは、ウェスタン・シドニーという地域愛と表裏一体のWSWへの崇高なクラブ愛を持つ。

 そんな彼らにしてみれば、いくらクラブ創設年からの顔であった小野伸二がいなくなろうとも、クラブへの熱い思いがぶれることはない。クラブと小野の双方が笑顔で別れられるタイミングを考えた時、契約満了となるシーズン終了というタイミングは悪くはないだろう。

 おそらく、小野の移籍に関してそう簡単に割り切れないのは、小野とWSWを応援してきた在豪の邦人コミュニティ、特に熱心なシドニー近郊の日本人達だろう。そこで、そんな彼らの思いをウェスタン・シドニー在住の日本人女性のエリさん(仮名)に代弁してもらうことにした。

 オージーの夫と息子2人の家族4人で熱心にWSWと小野伸二を応援してきたというエリさんだが、移籍の話を聞いた時のことを「とにかくショック。いつかは来ることだとは分かっていたけど、どこかでもう1、2年はいてくれるんじゃないかなって願っていた部分もあったので…」と語ってくれた。

 2人の息子は、小野がWSWで活躍する姿を見てから、それまでは“やらされていた”サッカーを自発的に楽しめるようになった。そんな彼らも、身近な憧れのスター選手の移籍にショックを受けているという。

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