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連載コラム 10年前

W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール。ネイマールの才能はいかにして磨かれたのか?(その1)

シリーズ:W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール text by 田崎健太 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

ネイマールを発掘した人物

 興味深いことに、サントスは決して設備が整ったクラブではない。

 例えば、経営基盤の安定したサンパウロはブラジル一の近代的なトレーニングセンターを保有している。そしてサンパウロのある巨大都市、サンパウロを中心としてブラジル全土から才能ある選手を集めてきた。カカもその一人だ。

 一方、サントスが本拠地とするサントス市は人口約43万人の中堅都市である。サントスのスタジアム、練習グラウンドなどのインフラは劣っているといえる。

 サンパウロにはサンパウロの他にもコリンチャンス、パルメイラスなどビッグクラブがある。その中で、どうしてサントスなのか――この問いに対する手がかりの一つが、育成部門のコーディネーター、リマだ。

 リマはネイマールを発掘した張本人でもある。

「ネイマールを初めて見たのは、彼が11才だったかな。父親に連れられてサントスにやってきたんだ。彼がフットサルをするのを見て、当時のサッカーディレクターだった、ジットにうちで獲ろうと話をした。

 ジットはこう言ったんだ。“この子の才能は疑いようもない。ただ、我々には彼がプレーするカテゴリーがない”。そこでサントスはネイマールを育てるため、13才以下のチームを立ち上げて、私が教えることになった」

 リマもまた伝説の選手である。

 本名、アントニオ・リマ・ドス・サントスは、61年から71年までサントスに所属、65ゴールを記録している。62、63年とリベルタドーレス杯、及びインターコンチネンタル杯を獲得、サンパウロ州選手権では七度優勝。ペレと共にサントスの黄金時代を築いた選手の一人だ。

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