W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール。謎の企業“トラフィック”はサッカーの敵か、味方か(その3)

ブラジルのサッカーは明暗がはっきりしている。ピッチ上で熱狂が続く一方で、裏側では不正な金が飛び交い、時に選手たちも権力者も犠牲になる。そんなビジネス面に新興勢力が登場した。トラフィックという企業だ。ロナウジーニョの移籍で一躍有名になったこの企業は一体何をしているのか? 現地でその正体に迫った。

2014年03月10日(Mon)11時48分配信

シリーズ:W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール
text by 田崎健太 photo Kenta Tazaki
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攻撃的な選手ばかり育てる理由

 ブラジルのスポーツマーケティング企業、トラフィックが運営するサッカークラブ、デスポルチーボ・ブラジル(DB)が数多あるクラブと異なっているのは、同じポジションの選手を多く集めることだ。

 この理由について訊ねると、DBの育成を担当するコーディネーターのルーカス・ゴエスは当然のことだろうと笑った。

「今やプロリーグのある国ならば、どこにでもブラジル人選手はいる。助っ人外国人に何を求めるのか考えてくれ。ドリブルが巧くて、得点を挙げられる攻撃的な選手だ。ぼくたちのクラブは選手を育てて売るためのクラブだ。攻撃的な選手を育てなければならない」

 DBでは選手のスカウトから育成まで一貫して同じシステムが採用されている。そして、そのシステムはサッカーの潮流により、適宜変更が行われる。

 2013年度は、4-2-3-1。前線に1人置き、その後ろに3人の攻撃的な中盤を並べるシステムである。2014年度から、4-2-4へと変更した。

「4-2-4ならば、前の4人の選手が主たる“売り物”となる。さらに中盤の2人もボランチとしてではなく、守備も出来る“メイア”(中盤)として育てる。ラミレス、パウリーニョ、フェルナンジーニョのような選手だ。ボランチは売れないが、メイアは売れる。欧州には守備を得意とするボランチは沢山いる。だから我々のクラブでは守備だけのボランチはいらない」

 ラミレス、パウリーニョ、フェルナンジーニョはそれぞれ、チェルシー、トテナム・ホットスパー、マンチェスター・シティに所属するブラジル代表選手である。

 彼らのような攻撃も出来る守備的ミッドフィールダーの需要はある。そのため、前線の4人に加えて、6人を売るという計算だ。

 ゴエスのファイルには、ポジションごとに理想とする選手像が書かれている。その選手像に必要な要素が項目となっており、それぞれ数値化されている。

 例えば、FWについては、〈ドリブル〉〈決定力〉〈正確さ〉〈スピード〉〈強さ〉といった具合だ。この数値を可視化して、他のスタッフと共有することによって効率的な育成を目指しているのだという。

「ブラジルのクラブでこんな風に選手のデータベースを作っているのはうちだけだろう」

 ゴエスは胸を張った。

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