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アジア 10年前

欧州で活躍、日本とも激闘。豪州史上最強の選手・キューウェルの引退が意味する“黄金世代”の終焉

text by 植松久隆 photo by Getty Images

クラブレスの状態だったことも

 しかし、誰もが次年以降も続くと考えていたキューウェルとメルボルンVの蜜月関係は、初年度のシーズン終了直後に突然の終りを迎える。「イギリスにいる義母の闘病生活を家族で支えたい」という家庭の事情で、欧州への復帰を熱望したキューウェルは、メルボルンVの慰留にも翻意することなく、契約を2年残して退団したのだ。

 この決断は結果的にキューウェル自身のサッカー選手としてのキャリアを狂わせることになる。希望したイングランドを始めとした欧州での契約は彼自身の高額なサラリーも影響して決まらず、結局、1年以上の長きに渡ってクラブレスの状態を余儀なくされる。

 所属クラブが無かったことで、代表でもオジェック前監督の構想から外され、本人は明言していなかったものの、事実上の「代表引退」の状況にあった。

 ようやく、2013年4月にカタール・リーグのアル・ガラファと3ヵ月の短期契約を結び、その契約が満了した7月に、キューウェルは約1年5か月ぶりの電撃的な豪州復帰を果たす。この移籍は、復帰先が古巣のメルボルンVでなく、彼らの“クロスタウン・ライバル”であるメルボルン・ハートだったことから、サッカーファンの間では大いに物議を醸したのは記憶に新しい。

 結果的に現役最後となった今季のメルボルン・ハートでは、キャプテンを任されたものの、またもやケガに悩まされる不本意なシーズンを送っている。試合出場が、26試合で14試合出場(4月3日現在)に留まったこともあり、「ずっと心のうちにあった」という「引退」を決断。26日に引退会見に臨んだ。

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