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カップ戦決勝でも不利な判定。落日の元王者リヨンが失った“贔屓の笛”と新たに得た称賛

text by 小川由紀子 photo by Ryota Harada , Yukiko Ogawa

生え抜きメンバーが多かったリヨン

 さらに言うなら、判定ミスがなかったとして、勝っていたとは限らない。1-0でハーフタイムを迎えていたら後半の局面は変わっていたことだろう。しかし、それがリヨンの勝利を保証するわけではない。

 リヨンのMFゴナロンは「あの判定で試合の流れが完全に変わってしまった」とは話したが、「PSGの勝利はふさわしいもの」という潔さも見せた。

 後半、リヨンはラカゼットがPSGのパスをインターセプトし、速攻で胸のすくようなスーパーゴールを決めて1点を返した。

 何がなんでも勝ちたかったのだろう、ボールを持ったものが個人でガンガン仕掛ける戦術のないPSGに対し、リヨンは中盤でしっかりボールをキープし、形を作った上で展開していくという「サッカーらしい」ゲームをしていた。

 バックラインも堅実な守備で、パリのストライカーたちを自由にさせなかった。さらにリヨンは、ロペス、ラカゼット、ゴナロンら、主力はみな生え抜きメンバー。彼らに続く20歳前後のトリッソ、フェキールといった育成所あがりの若手もピッチに並ぶ、まさにフランスサッカーの将来を担うラインナップ。公平に見て「勝たせたい」と思えたのはリヨンだった。

 外国人スター選手が居並び、国外からの注目も集め出したPSGの存在は、リーグアンの人気、知名度を上げることには貢献している。しかしその反動かのように、リヨンのような国産プレイヤーを育てるクラブへの称賛の声も日増しに高まっている。

 惜しくも優勝カップは逃したが、リヨンにはその誇りとともに、今後もクラブ哲学を貫いていってもらいたい。

【了】

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