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王者バイエルンはなぜ敗れたのか? レアル戦で見えた未熟な姿とペップ・スタイルの脆さ

text by 本田千尋 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

ペップ・スタイルの宿命

 シュバインシュタイガーが中盤に下がりながら、クロース、マルティネス、リベリーとボックスを形成するなど、ポジションチェンジを繰り返しながら、ボールを回し始める。ようやく「らしさ」を取り戻したバイエルンだが、時は既に遅かった。59分リベリーのドリブルからのシュートも、63分のクロースのミドルも、カシージャスがキャッチする。

 72分にはリベリーに代えてゲッツェ、ミュラーに代えてピサロが投入されるが、状況を変えることはできない。75分のゲッツェのシュートは左に、77分のクロースのシュートは右に逸れて、虚しく空を切った。そして89分には、ロナウドに直接FKを決められて、止めを指されてしまう。

 ペップ・バイエルンのCL連覇、そして3冠の夢は潰えた。バイエルンがポゼッション・スタイルを貫こうとする限り、つまり相手を自陣に押しとどめようとする限り、同時に相手へとその後方に広大なスペースを与えることになる。ボールを支配しようとすることは、カウンターのリスクも同時に高まっていくこととなる。

 それはペップがバルセロナを率いていた頃から、チェルシーを相手にしたときのように明らかだったかもしれないが、ここでまたマドリーを相手にしてやられることとなってしまった。カウンターはセットプレーに繋がり、バイエルンはセットプレーでの脆さも露呈する。

 マドリーを相手にした欧州CL準決勝2ndレグで、ペップ・バイエルンは未熟な姿を晒すこととなった。しかしそれは同時に成熟への途上でもある。来季はドルトムントからレヴァンドフスキが加入するなど、新たなメンバーを加える。

 マドリーとの対戦での惨敗という結果を胸に、またペップは戦術を進化させていくのだろう。そしてまた欧州の頂きを目指す途上で、再び白い巨人と相対することとなるに違いない。かつてバルセロナが幾度となくチェルシーと相まみえたように。

 ペップ・バイエルンは、まだ船出したばかりだ。

【了】

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