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長友佑都 10年前

絶対に負けられないラツィオ戦で汚名返上したインテル。長友に受け継がれるサネッティの飽くなき向上心

クラブを長く支えたサネッティの引退。インテルの象徴とも言える存在との別れとなったラツィオ戦は絶対に落とせない試合だった。今季、あまり調子の上がらなかったインテルだが、この試合では汚名返上とばかりに躍動。偉大なるキャプテンをしっかりと送り出した。

text by 神尾光臣 photo by Mitsuomi Kamio , Kazhito Yamada / Kaz Photography

絶対に落とせなかったラツィオ戦

絶対に負けられないラツィオ戦で汚名返上したインテル。長友に受け継がれるサネッティの飽くなき向上心
試合後に行われたサネッティへのセレモニー【写真:神尾光臣】

 本当に感動的なセレモニーだった。地域侮蔑行為により入場禁止処分を食らったゴール裏以外、全てのエリアを埋め尽くした64000人の観客は誰一人として帰らず、サン・シーロのラストゲームとなったハビエル・サネッティの現役引退セレモニーを見守った。

「僕はこのユニフォームを守ることを誇りに出来た。僕はインテルを愛することを学んだし、これからも愛し抜く」

 その言葉通り、体が許す限り全力疾走を続けたことはみんなが知っている。カピターノとの惜別に際し、多くのファンがスタンドで実際に涙していた。そしてそれは、チームメイトたちも同じ。スピーチ中、スクリーンに大写しになった長友は、目に涙を溜めていた。

「負けていたら本当にこれほどいいセレモニーは出来ていなかったと思うので、勝ったことにホッとしています」。うっかり試合の内容を忘れそうになるが、ラツィオ戦はそういった意味で絶対に落とせなかったのである。

 前節は不甲斐ない内容でダービーに破れ、マッツァーリ監督に対してはツィッターで解任運動も起こるほど。破れたらEL進出をフイにし、なによりこの夜をぶち壊しにしてしまうところだった。しかしインテルは、見事に汚名返上を果たした。それも相当に、説得力のある内容でだ。

 開始2分こそセットプレーで失点をするが、コバチッチの正確なスルーパスからパラシオが一転返した後は、前節の醜態からは見違えるほど流麗なパスワークを披露した。中でも長友とコバチッチが左サイドで見せた連係は、チームとしての欠点の修正と向上を明確に物語るものだった。

 前節のミラノダービーでは効果的な攻撃が余り出来ず、「早いタイミングでボールが欲しかった」と長友は語っていた。だがこの日はスペースへ走り込むと、即座にコバチッチから正確なパスが付けられ、トップスピードでサイドを破ることが出来た。

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