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ドイツ主将ラームは妻のために。私利私欲を超えた4年に一度の祭典。W杯は誰のために戦うのか?

text by 本田千尋 photo by Ryota Harada , Getty Images

私利私欲を超えた先にあるもの

 祖国の存在、国民の熱狂、メディアの視線……計り知れない重圧に晒されながら、W杯というビッグ・トーナメントを戦うためには、メンタル面での準備、在り方も重要になってくるだろう。

 同時に、4年に一度の世界大会を戦い抜くためには、心の拠り所もどこか必要になってくるのかもしれない。戦術を遂行し、持てる技術を駆使して戦う選手も、剥き出しの心を持つ生身の人間である。

 もちろん選手たちはチームが勝つために試合に臨む。しかし、愛する家族、不慮の事故で夭折した友人、大規模の天災に見舞われた人々……そこで私利私欲を超えた何かのために戦おうとする者は、そうではない者と違って、勝利への可能性が変わってくるのではないだろうか。

 それは自らを犠牲にする、ということとは少し趣を異にする。献身は決して自己犠牲ではないのだ。何かのために戦おうとすることは、力の源となるだけでなく、重圧の軽減にも繋がるだろう。つまり、気持ちを奮い起こし、プレッシャーを軽減する何かを持つ者は強い、とも言えるかもしれない。

 ドイツ代表フィリップ・ラームがブラジルの地で、少なくとも最愛の妻のために戦うことは、間違いなさそうだ。

 W杯は、何が大切なものなのか、改めて確認させてくれる祭典なのかもしれない。

【了】

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