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アジア 10年前

強烈な残像はいつまでも消えず――。小野が豪州に残した功績、豪州が小野に与えた影響

小野伸二が豪州を去った。最後はACLの広島戦。勝利に貢献する活躍を見せ、最後まで強烈なインパクトを残した。移籍をして豪州を去っても、その残像が消えることはない。

text by 植松久隆 photo by Taka Uematsu , Kazuya Baba

小野にとって期待以上だった豪州の環境

 今月は元々、W杯に臨むサッカルーズに関する別のネタを考えていた。だが、小野伸二の豪州の地でのオーラスとなるACL広島戦(14日)を見た後、1年7ヶ月に及んだ小野の豪州でのプレーとその功績をトリビュートする必要を感じて内容を差し替えた。

 一昨年の入団直後に初めて単独インタビューで相対した時、筆者はインタビューの冒頭で「豪州に来てくれて本当に有難く思う」というような感謝の弁を小野本人にぶつけた。今思えば、話の枕としては何とも変な入り方だった。実際、マスコミ対応では海千山千のはずの小野も、いきなりのインタビュアーからの感謝の言葉に驚いた様子だった。

 でも、日豪両国のサッカーに関する事象を長年切り取ってきた身には、彼のような日本サッカーのレジェンドが海を渡って豪州でプレーをするという選択をしたことが純粋に有難い―ただそれだけの気持ちだった。

“ダウンアンダー(Down under)”と揶揄されるサッカーのメインストリームから離れた辺境に、我が国が誇る現役バリバリの”天才“がやってきたことは、とにかくも「事件」だった。

 清水エスパルスで不遇のときを過ごしていた小野に、思ってもいなかった豪州からのオファー。変化の必要を感じていた小野は、日本を良く知るトニー・ポポヴィッチ監督の熱い誘いに心が動く。必要とされて移籍してきたWSWでの時間は、小野本人が思っていた以上に充実していた。

 5月12日、豪州での1年7ヶ月のプレーを切り上げる直前のタイミングで話を聞いた小野は「シドニーに来てから、色んなもやもやが吹っ切れた。また、サッカーを楽しむということを思い出せた」とWSWに来てからのポジティブな変化を振り返った。

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