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アジア 10年前

強烈な残像はいつまでも消えず――。小野が豪州に残した功績、豪州が小野に与えた影響

text by 植松久隆 photo by Taka Uematsu , Kazuya Baba

“赤と黒”が似合う男。移籍先は奇しくも……

強烈な残像はいつまでも消えず――。小野が豪州に残した功績、豪州が小野に与えた影響
揃って小野ファンという父娘。小野は老若男女問わず人気者だ【写真:Taka Uematsu】

 小野ほどの選手を覚醒させるような素晴らしい環境(必ずしもクラブの設備などのハード面は含むとは限らない)が、ここにはある。抜けるような青い空、鮮やかな緑の芝がどこにでもあり、リラックスしたライフスタイル、底抜けにフレンドリーなオージーがいる――そのすべてが彼には合ったのだろう。

「この国を離れて恋しくなるものは?」との問いにも「この気候かな。何だろうな、雰囲気、空気。本当にすごく合ってた。子供たちも連れて、またここに来たい」とその思いを隠すことはない。

 小野のWSW入団後、ふと「本当にWSWの赤と黒が良く似合うな」と感じて、彼の今までの全ての所属先のユニフォーム姿の画像を比較してみたことがあった。そして、異論はあるだろうし、身びいきかも知れないが、WSWの赤と黒が一番似合っているという結論に達した。

 その次にフェイエノールト、そして浦和レッズというのが勝手な個人的ランキング。「ただその色が似合うだけ」と言われれば、そうなのかも知れない。しかし、非科学的に過ぎると言われても、本人のクラブでの充実度がユニフォームとの親和性を高めるという気がしてならない――だからこそ、WSWの赤と黒が良く似合うのだと。

 帰国直前のインタビューでは、当然ながら次の移籍先のことに話は及ぶ。「それにしても、赤と黒に縁がありますよね」と話を振ると、「そうですね。(ユニフォームの縞が)横から縦に変わるだけだし、ユニフォームの問題はない」と笑いながら、小野は答えた。

 筆者の非科学的推論からすれば、小野と札幌の親和性は高いはず。現在、非常に厳しいチーム状態にある札幌を7月から颯爽とピッチに姿を現す小野伸二が救う――そんな新たなストーリーが北の大地で紡がれていくと信じよう。

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