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一時は3部でプレーもリヴァプールへ移籍、W杯メンバーにも選出。“弱冠32歳”ランバートのシンデレラ物語

text by 山中忍 photo by Getty Images

本格的なプロ生活5年目を終えたばかりの「弱冠32歳」

 もちろん前線の主役は、今季リーグ戦で合わせて52得点のルイス・スアレスとスタリッジだ。

 来季はCL出場による試合数増でローテーションがあり得るが、ランバートの基本的な立ち位置は前線のバックアッパー。キャリア晩年の30代にとっては、特にフラストレーションが溜まる境遇だ。

 しかし、この点もランバートは例外。アカデミーを去ってから苦節17年で舞い戻ったリヴァプールは、最愛の地元クラブなのだ。「言葉では表現できない」と契約の喜びを語った本人は、納得尽くで、サウサンプトンでの常時出場を少年時代からの夢の実現と引き換えている。

 リヴァプールのファンも、ベンチに座るランバートにさえ声援を送るのではないだろうか?

 人々は下積みの長い苦労人に暖かい。代表デビューを果たした昨年8月のスコットランド戦(3-2)でも、後半に投入されたランバートへの声援は、当日のウェンブリー・スタジアムで最大級のボリュームだった。得意のヘディングで逆転ゴールを決めた後は、チャンスの度に「ランバート」コールが沸き起こった。

 自ら、27歳でのサウサンプトン入りまでは「プロの能力はあっても、プロの意識が足りなかった」と認めたのは、その代表デビュー戦前のこと。2009年当時のアラン・パーデュー監督(現ニューカッスル)に「節制不足」を忠告されたランバートは、体重を6キロ近く絞ることに成功したという。

 オーバーウェイト解消と共に、泣き所だった故障癖にも別れを告げ、3部に落ちていたチームと共にプレミア級への上昇が始まった。言わば現在のランバートは、斜陽の32歳ではなく、心身両面で本格的なプロ生活5年目を終えたばかりの「弱冠32歳」。

 リヴァプールのアカデミー落伍者が、プレミア得点王トップ2に次ぐ1軍第3FWに化けたシンデレラ物語は、まだ完結してはいない。

【了】

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