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連載コラム 10年前

元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 第10回 1部昇格をかけた厳しい戦いの中で見えたこと

シリーズ:元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 text by 西村卓朗 photo by VONDS市原

8月11日 On the pitch 関東リーグ2部第16節 対東京海上日動戦(ホーム)

 前日の興奮冷めやらぬ状態から1夜明け、佳境を迎えていたリーグ戦。

 前日の試合が18時。この日の試合が11時。試合終了後から15時間後の真夏の炎天下の試合。2試合連続のスタメン選手は、早川、濱屋、斉藤孝、秋葉。このカテゴリーならでは過酷なスケジュールだ。この試合でもここまで出場機会が少なかった菅野が右SB、尾形がSHで出場した。

 難しい試合になるとは思っていたが、予想通り、連戦の選手の動きは重く、判断は鈍かった。

 開始6分にあっさり先制点を許す。疲れと焦りと、ゲームが落ち着かなかったので、菅野を本職のCBに、濱屋をボランチにあげ、山根をSH、鈴木を右SBにすると少しずつリズムができ始めた。ハームタイムには、「焦らず、根気強く、ボールを動かしサイドから攻めること」を伝えた。

 後半は負傷の村山に代え小川、疲れの見えた尾形に代え、中村と交代カードを早めに切った。それが実を結び53分に秋葉、62分に中村の得点で逆転に成功した。連戦で疲れの見える斉藤孝を宮内に代え、濱屋を再びCBに戻した。

 昇格が近づき、他会場の結果が耳に入りながらの後半戦だったがこのまますんなり終わらないのがサッカーである。

 終了間際にきわどい判定がいくつか続く。不穏な空気の中なんとロスタイムに渡邉が相手選手をペナルティーエリア内で倒したと判定され、PKが与えられ、渡邉は退場となってしまった。こうなったら祈るしかない。

 その短い時間の中で色々なこと頭をよぎる。リーグ中断前に是が非でも昇格だけは決めておきたい。全国社会人大会への準備期間として残りのリーグを有効活用できるなどいろいろ考えていた。

 姉崎公園には昇格を観に集まったサポーター達が多数いた。そんな人達の想いが伝わったのか、キックはクロスバーの上を超えていった。

 サッカーは本当に不思議なスポーツだ。そんなことを切に思った。何はともあれ、昇格。しかしながらそれを噛みしめる暇もなく、次にやるべきことが
控えていた。

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