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勝利の感涙も現地紙は「泣きっ面はうんざり」と批判。負ければ「永久戦犯」、巨大な重圧に苦しむセレソン

ベスト16で苦戦の末、チリを下したブラジル。選手たちは思わず涙したが、それすらも現地メディアからは批判されている。尋常ではないプレッシャーに苦しむ選手たち。果たして乗り越えることができるだろうか。

text by 下薗昌記 photo by Getty Images , Masaki Simozono

余裕なかった主将チアゴ・シウバ

勝利の感涙も現地紙は「泣きっ面はうんざり」と批判。負ければ「永久戦犯」、巨大な重圧に苦しむセレソン
チアゴ・シウバは選手たちの輪から離れて、一人ボールに腰をかけ、自らの世界に浸っていた【写真:Getty Images】

 圧倒的なホームの後押しを受けられる自国開催で、12年ぶりの王座奪回を狙うブラジル。決勝トーナメント1回戦で、チリを辛うじてPK戦で下し8強入りを決めたサッカー王国ではあるが、選手たちは想像を絶する重圧の前に苦しみ続けている。

 息が詰まる120分間の激闘を終えて、PK戦に向かう直前に選手たちの異常なまでの精神状態がピッチ上に現れていた。34歳のチーム最年長の守護神、ジュリオ・セーザルはまだPK戦が始まってもいない段階で天を仰ぎ、感極まったように涙を流していた。

 開幕前から主将の重圧に押しつぶされかけていたチアゴ・シウバに至っては、チームメートを鼓舞する余裕さえなく、選手たちの輪から離れて、一人ボールに腰をかけ、自らの世界に浸っていた。

 PK戦で失敗を犯したウィリアンやフッキを慰めに駆け寄る余裕さえなく、堂々と1人目のキッカーの重責を果たしたダビド・ルイスが真っ先にミスを犯した仲間たちを慰めに走っていた。ちなみに、チアゴは11人目のキッカーにして欲しい、とスコラーリ監督に懇願していたという。

 5人目のキッカーとして登場したネイマールは見事にネットを揺さぶったが、そのネイマールも試合後の歓喜の涙。「喜びの涙さ」と振り返ったが、チリ戦後の選手たちのリアクションは「勝って良かった」というポジティブな反応と言うよりは「負けずに済んだ」という重圧からの解放感ではなかったか――。

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