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暴走はなぜ止まらないのか?「新国立競技場問題」の核心(その2)

新国立競技場問題が混迷するなか、後藤健生の手によって、『国立競技場の100年――明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ――』という一冊の本が生み出された。国立競技場の歴史を紐解き、その将来像を描き出した渾身の書である。そこで、64年の東京五輪を国立競技場で観戦していた後藤健生と佐山一郎が、「巨大スタジアム」をめぐって論議した。

text by 佐山一郎

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サッカーライターは設計案なんか眼中にない

佐山一郎(以下、佐山) 2002年日韓共催のときの建設ラッシュからして、サッカー関連のメディアはノーウォッチ状態。時すでに遅しで、観客意思もへったくれもないハコモノが、とくに宮城(編注・宮城スタジアム)と横浜(編注・日産スタジアム)に出来てしまった。次はもう手遅れにしませんよと週刊誌に寄稿した割には、介護や雑誌の休刊続きで、動きがとれなかったというか。

後藤健生(以下、後藤) サッカーライターは、サッカーのことは心配してるけど、設計案のことなんか眼中にない。新国立競技場のコンペに関しては、最初から出来レースで、格好つけたかっただけ。

 賞金(2000万円)もあげたんだろうし、ザハ案は白紙撤回したっていい。特にザハの場合は、あとで揉めるのは毎度のことなんだから。あんな大げさなものを造るのは大変で時間もかかります。もっとシンプルで安上がりなものでいいんじゃないのかな。

佐山 8万人規模にこだわるのは、W杯「共催」後遺症ですかね。単独開催の決勝を首都・東京でやれる日本を取り戻したいのかもしれない。ラグビーW杯(RWC2019)のガイドラインは、決勝と準決勝が6万人以上で準々決勝は3万5000人以上。最小の会場が1万5000人プラス照明設備というふうでもう少しサイズが小さい。

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