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岡野俊一郎と金子勝彦が語る日本サッカー(その3)TV中継に何が必要で、何が欠けているのか?

text by 藤江直人 photo by Getty Images , editorial staff

スポーツはスポーツとして普通に放送して欲しい

岡野 彼は西ドイツでも解説を務めていたからね。半世紀以上も前の話だけれども、クラマーの言う通りだと心の底から思いますよ。時代の変遷とともにサッカーを取り巻く環境も大きく異なったとは言っても、何よりも重要なのは変化していくものにどう対応していくか。そのためには、繰り返しになりますけれども勉強が必要なんです。

 少しでも多くの人にサッカーを楽しんでもらい、ファンを増やし、子どもたちにサッカーをやりたいと思わせるためには、放送前にその試合のメインテーマをプロデューサーやアナウンサーとしっかりと打ち合わせしておくこと。

 特にJリーグを解説する場合は、ホームチームの地域性というものが非常に重要になってくる。これだけの放送機会があるのに、ぱっと集まって打合せなしに放送して、反省や検証も何もなしに解散するのではあまりにもったいない話じゃないですか。

金子 この話をすると僕は涙が出るほどに感情が昂ぶるんですけれども、先人たちが育ててきた日本のサッカー文化というものを、絶対に衰退させてはいけないんですね。数十年間にわたって、中には天に召された方々がさまざまな努力を積み重ねてこられて、いまは岡野さんが良心の核を務められていると僕は思っています。

 岡野さんがこれまでおっしゃられてきた言葉は大切な教訓です。サッカー放送の原点として絶対に継承していって欲しい。岡野さんの名代が一刻も早く出てきて欲しいと、心から願っています。

岡野 国際試合になるとゲストが呼ばれますよね。民放の場合は芸能人が多いんですけれども、それで視聴率が上がるかどうかは別として、ある局のトップに聞いたら局への苦情のほとんどは「芸能人を呼ぶな」というものらしいんですね。

 スポーツはスポーツとして、普通に放送して欲しい。日本のテレビ局が制作する映像だと往々にして審判団の紹介が遅れます。キックオフ直前のコイントスの段階などで、4人の審判団を紹介すべきなんですよ。審判の国籍によってプレーの質を変える必要があるほど、審判団の性格が作戦に大きな影響を与えるのがサッカーであり、それを視聴者にしっかりと伝えるべきなんです。

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