走り切れる上に集中も途切れない鳥栖
サガン鳥栖は7日、ユン・ジョンファン監督監督との契約を解除したと発表した。首位につけるチームの指揮官が突如退任したことに、多くの人が驚いたはずだ。9日にはサンフレッチェ広島戦が控えているだけに、チームの状態が気になるところだ。
J1初参戦となった2012年は大躍進の5位、2年目の昨シーズンは下位に低迷するも最後は12位でフィニッシュ。鳥栖は、波はありながらもしっかりJ1を戦ってきた。
3年目の今シーズンはJ1定着を目論んで始まったが、前節の勝利で首位に浮上。一躍リーグの主役に躍り出た。自陣、敵陣の両ゴール前での力強さはリーグ屈指だろう。大崩れすることなく、そして得点の匂いも常に漂う。
攻守におけるハードワークはもはやJ1でもお馴染みの光景だ。誰もがサボらない上に、確信を持って走っていることが攻守ともに噛み合っている要因だろう。ボールが来ず、一見無駄走りに見えるような場面も、相手にとっては厄介だ。
攻撃では、やはりFW豊田陽平の存在が心強い。日本人離れしたフィジカル能力を如何なく発揮し、相手の脅威となっている。前節までで9得点を奪っており、今後も得点王争いを盛り上げていくはずだ。また、彼に一度ボールを当ててからの二次攻撃も迫力があり、豊田の落としに周囲の選手が呼応できている。チームとしての約束事も徹底されている。
前節の試合後、ユン前監督は最後まで集中して90分を戦った選手たちを称えた。普段から半端ではない活動量を選手たちに求め、選手たちも必死に食らいついているからこそ、最後まで集中が切れない。真夏であってもそれができるというのは、鳥栖というチームの実力を物語っている。
リードしてからは堅いブロックを築いて相手に攻め入る隙を与えず。FW池田圭の先制点は相手GK楢崎正剛の意表を突く形で生まれ、その1点をしっかり守り切った。
夕方以降に行われるとはいえ、真夏の試合は気温も湿度も高い。体力は削られ、ピッチの至るところにスペースが生まれる。試合もオープンになり、点の取り合いに発展することが多い。だが鳥栖は奪った1点を粘り強く死守し、相手の攻撃をシャットアウトすることができる。足の止まった相手を畳み掛けるような試合は少ないが、相手にも好きにやらせない。それは相手の攻撃を防ぎ切れるだけの自信があるからだろう。しぶとく勝ちを得ていくのは、鳥栖の真骨頂といえる。