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Jリーグ 10年前

ユン・ジョンファン監督退任の鳥栖。リーグ2連覇中の広島相手に勝利を掴めるか

text by 青木務 photo by Kenzaburo Matsuoka

足踏みが続くJ王者・広島

 7月15日の再開後、5試合を戦って成績は1勝2敗2分と足踏み状態が続いている広島。特に前節の鹿島アントラーズ戦は順位の近いチーム同士の直接対決だったが、1-5と完膚なきまでに叩きのめされた。

 昨シーズンの広島は夏にぐんと調子を上げて首位に立った。7月の5試合を全勝で駆け抜け、首位も奪取した。この時の広島には夏場の苦しい時期をものともしない勢いと勝負強さがあった。

 毎年主力を引き抜かれており、今年はGK西川周作がチームを退団。移籍先の浦和レッズで無失点記録を作るなど、守護神としての実力は折り紙付きだった。とはいえGKの存在だけが守備力を決めるわけではない。新加入の林卓人が力を持った選手であることは言うまでもない。

 他のクラブと違うのは、広島が3連覇を目指すシーズンを戦っているということだ。

 2連覇したクラブは複数あるが、3連覇を達成したのは1クラブのみ。選手は等しく年を重ね、チーム内の新陳代謝が求められる。同じメンバーで戦えば熟成はしていくが、3年同じではフレッシュさが損なわれる。かといって一気に刷新すれば全く違うチームになってしまう。若手の勢いだけでも、ベテランの落ち着きだけでもない。すべてがうまく噛み合わなければならない。その辺りも、3連覇を目指すシーズンがより難しい要因ではないだろうか。

 今の広島は軸となる選手の存在感は大きいが、緩やかな新陳代謝を促す若手には更なる奮起が必要だ。MF野津田岳人は20歳と若いが、主力に割って入るだけのポテンシャルはあり、出場機会も多い。だが、まだ大きなインパクトは残せていない。攻撃陣には魅力的なタレントが揃うが、先輩たちを押しのけるような活躍が増えなければ、広島のチームとしての成長も止まってしまう。

 2012年に初優勝を果たし、対戦相手からのマークが厳しくなった昨年も勝点を積み重ねて連覇を果たした。ミハイロ・ペトロヴィッチ前監督と作り上げた攻撃的スタイルに、森保一監督が求めた守備でのハードワークや対戦相手に応じて守備的布陣で臨むなど、勝利のために徹底的に相手を研究した。3連覇のためにも、まずは目の前の試合に勝たなければならない。

 今節、リーグで最も馬力のある首位・鳥栖に勝つことで、広島は王者の実力を示したい。

【了】

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