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Jリーグ 10年前

前からの守備が機能し始めたマリノス。野沢加入で攻撃のバリエーションが増えた仙台を止められるか

text by 青木務 photo by Getty Images

野沢の加入で攻撃力アップに期待の仙台

 仙台は今シーズン始め、オーストラリア人のグラハム・アーノルド氏を監督に招聘した。手倉森誠前監督(現・U-21日本代表監督)が築き上げた隙のないチームを更に進化させることが目的だった。

 しかし改革は思うように進まず、ポゼッションを目指したがボールを保持できず、ボールを持たされてもフィニッシュに結びつけることができない。

 すると攻撃だけでなく守備も崩壊し、チームのスタイルはたちまち不透明になった。

 リーグ戦6試合を消化したところでアーノルド氏を解任、渡邉晋コーチが監督に就任した。これまでの仙台のスタイルを知る渡邉監督の下、チームは少しずつ建て直しを図った。

 8月には、MF野沢拓也の加入が発表された。チーム合流直後から試合に絡むと、移籍後最初の試合で非凡なセンスを見せて決定機を演出した。

 仙台にはMF梁勇基という決定的な仕事を果たす選手がいるが、野沢が入ることで梁の負担も軽減させることができる。

 野沢の影響力は確実にチーム内に波及している。移籍後初スタメンとなった20節の清水エスパルス戦で、野沢はFW武藤雄樹の得点の起点になるパスを出したが、武藤は野沢が自分を見てくれると信じてスピードを上げた。加入後間もない期間で仙台の選手たちから信頼を獲得していると思わせる場面だった。

 野沢は出場機会を求めて仙台にやって来た。鹿島は若手の台頭が著しく、野沢の出場機会は限られていた。試合に出たい、という思いで古巣に別れを告げ、新天地を求めた。

 そして仙台で、野沢はすでに周囲の信頼を得ている。現在12位のチームにとって、大事なのは降格の心配がないところまで順位を上げること。その点、野沢は勝利する術を知っている。鹿島にいくつものタイトルをもたらし、勝者のメンタリティを備える男のプレーは、仙台にとって大きな助けとなる。

【了】

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