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日本代表 10年前

“慶應ボーイ”。先行したイメージを払拭、武藤嘉紀のパフォーマンス。流れを変えた高い意識

text by 河治良幸 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

好影響を与えた武藤の意識

「(個人に対する)監督からの指示は特になかった」という武藤だが、前半をベンチから見ていて感じたのが「1本のパスで深い位置に切り込みすぎていて、真ん中でもらったり、タメを作ることが少なかった」ということ。

 ベネズエラのプレッシャーが厳しい状況で、安易に蹴ったボールがカットされる場面も多く、チャンスが作れないだけでなく、守備にも悪い影響を与えていた。

 そこで武藤は「自分は間に入って攻撃を活性化させればいいと思って入った」という。予測しながらの素早い動きでセカンドボールを拾い、得点につなげた後半6分の場面は「あそこでサポートがないと攻撃が流動的にならない」という意識が理想的な結果として表れたものだ。

 さらに柴崎の追加点が生まれた場面では岡崎に起点のパスを通すと、そこから本田とともに走りこんで、岡崎のクロスに柴崎が合わせるスペースを生み出した。後半の途中から相手に多少の疲れが見えてきたとはいえ、間でボールを受け、時に拾って素早いパスや仕掛けを繰り出す武藤のプレーは相手のディフェンスにとっても、かなり厄介だったはずだ。

 全体を見ればミスもあった。「最後のパスの正確性はまだまだ突き上げていかないといけない」と本人も自覚しており、「本田選手のFKのこぼれ球とか、もっと集中して感覚を研ぎ澄まさないといけない場面が多々あった」といった局面での判断にも反省を示している。

 とはいえ代表初キャップとなった今回の2試合で大事だったのは結果に加え、慣れないメンバーの中でも前半から課題を見出し、ポジションの役割と特徴を活かした自分なりの回答を表現できたこと。周囲とうまく絡んでチャンスにつなげる場面をいくつか作れたことだろう。掴みは上々というところだ。

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