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フットボールマネーを追え!【05】海外放映権に加え、国内にも強固な基盤を持つプレミア。その背景には“ファンも育てる”育成方針

シリーズ:フットボールマネーを追え! text by 小松孝 photo by Getty Images

育成費用は日本の5倍以上。サッカー文化が根付くイングランド

 なかでもプレミアリーグが群を抜いているのは、今まで見て来た通りだが、英国内に限っていうと、その熱狂ぶりを支える要因は何か。

 2012年8月、ロンドン五輪、男子サッカー決勝(ブラジル対メキシコ)が行われたウエンブリー・スタジアムで、試合観戦に来ていた御年80歳になる英国紳士と話す機会を得たが、彼は生涯、地元のノッティンガムフォレスト(英チャンピオンシップ=2部に相当)ひと筋で、隣にいた50歳になる彼の息子も同じだという。

 もともと都市国家として成長を遂げてきた欧州では、ホームタウンへの愛着心は、おそらく日本人以上に根強いものがあるのだろう。

『The FA(ザ・エフエー)』と呼ばれるイングランド・サッカー協会(正確には、協会とは言わず、ザ・フットボール・アソシエーションという)は、育成した選手を地元クラブのトップチームに昇格させることにも力を注いでいる。

 元イングランド代表主将デイビッド・ベッカムが13歳のとき、生まれ故郷のロンドンを離れ、300km北にあるマンチェスター・ユナイテッドの練習生になったことが、その後に話題になったのも、そのためだ。

 FAが選手育成に使うコストは年間、8,700万ポンド(約150億円)。一方、日本サッカー協会が拠出する指導育成費は年間28億円程度で、しかも彼らの人件費総額30億円を下回る金額であることなどから、批判の槍玉にあげられることも少なくない。

 ジュニア世代のチーム数で見てみると、イングランドの場合、学校とアマチュアクラブの総数は13/14シーズン統計で約49,000。一方、日本サッカー協会の13年度実績では、第3種(15歳以下)と第4種(12歳以下)の合計数は約16,000。

 もちろん各チームの登録人数や、そもそものサッカー人口を考慮しなければならないが、同じ島国として単純に比較した場合、チーム数でさえ3倍の開きがあり、それに人口比を加えると、その差は実に6倍に広がる。

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