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Jリーグ 10年前

大宮が見せつけた確かな残留力。大卒ルーキー泉澤に継承される粘りのDNA

text by 青木務 photo by Getty Images

ルーキー・泉澤の活躍が残留へのカギ

 徐々に出場機会を増やしている泉澤は、縦への鋭い突破が目を引く。緩急をつけて一気に加速するドリブルはわかっていても容易には止められない。

 しかし、同じプレーが続けば相手も研究してくる。最近は縦を切られていることを感じていた。

 だが、縦に行けないのなら中に行く。先制点が生まれる前、3分にも同じような場面があった。右サイドからのサイドチェンジが泉澤に渡る。小柄な背番号39は中央へ切れ込み、右足でシュートを放っている。これはCKとなってしまったが、このプレーが後の先制点へと繋がっていく。

「1回目は中に入って、次も中を意識していたんですけど、北斗さんがいいタイミングで上がってきていたので。まあ、合わせただけです」

 最後は謙遜していたが、最初の仕掛けで相手に“中もある”と思わせたことも、あの得点の呼び水となった。

 大宮にとって、泉澤は攻撃におけるキープレーヤーのひとりだ。家長を中心に右サイドでゲームを作り、相手を引きつけておいて左サイドへ展開。この流れで清水を何度も揺さぶった。

「基本的にはアキさん(家長)が外に張らずに中に入ってきて、僕が外に張る形なので、右サイドでタメを作って左から仕掛けるという感じです」

 また守備でも、中村とマークを受け渡しながらしっかり対応した。後半なかばには自陣深くまで戻って相手のドリブル突破を食い止めた。「守備はもっと改善しないといけない」というが、粘り強い対応はルーキーながら頼もしさすら感じさせた。

 この日は勝利したが、厳しい状況にあることに変わりない。優勝争いとはまた違う緊張感が、残留争いにはある。

 阪南大学時代は総理大臣杯優勝を成し遂げ、ユニバーシアード代表として銅メダル獲得にも貢献した。頂点を懸けて戦っていた頃には感じたことのないプレッシャーがあるという。

「基本的に優勝争いしかしてこなかったので、結構プレッシャーだなと初めて思いました。あまりプレッシャーとか感じないんですけど」

 重圧の中で心がけていることがある。

「楽しむプレーというよりも、今は勝つサッカーをしないといけない。軽いプレーは本当に減らしていこうと思います」

 今やチームになくてはならない存在となった泉澤。彼のパフォーマンスがJ1残留のカギを握ると言っても、決して言い過ぎではない。

【了】

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