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Jリーグ 10年前

頑固なまでにクソ真面目。「サッカー馬鹿一代」大分指揮官・田坂和昭の美学

text by ひぐらしひなつ photo by Getty Images

頑固一徹指揮官の下で

「育てながら勝つ」。

頑固なまでにクソ真面目。「サッカー馬鹿一代」大分指揮官・田坂和昭の美学
昨季の無念さを噛みしめ、田坂監督は宣言した【写真:Getty Images】

 昨季の無念さを噛みしめ、田坂監督は宣言した。J2降格の責任を取り辞任する意向でいた指揮官をクラブが慰留して続投させたのは、その理想と現実とのバランス感覚を評価しての選択だった。

「戦力の育成」と「目先の結果」の二兎を追うのは容易ではない。昇格という結果のみを追求するなら、極端な話、強力な盾と矛を揃えればどうにかなる。「でもそんなのつまんない」と、田坂監督はつねづね言うのだ。「見てる人もプレーする側も、そんなの面白くないでしょ」。昨季あれほど「個の力」に押さえ込まれ苦汁を飲んだにも関わらず、いやむしろ、だからこそ余計に、「サッカーは組織でやるもの」という理念が、田坂監督の負けず嫌いに火をつけた。

 昨季J1で田坂監督が最も痛感した”力量差”は、選手個々の判断力だった。良い仕事をするプレーヤーは瞬時の判断に長けている。そこで日々のトレーニングに、思考の要素をより多く盛り込んだ。蹴る・止めるといった基礎練習ひとつ取っても、メニューは一筋縄ではいかない。

 選手に対しては辛抱強く接し続けた。先発起用したFWが散々で、後半アタマから交代予定だったが、ロッカールームでの様子を観察し「あと15分」と待ったことがある。このタイミングでベンチに下げるのは切り捨てでしかなく、選手の今後の可能性を潰しかねない。その瀬戸際の判断が、試合結果としては裏目に出ることもある。それでも、90分で勝ちきるゲームのように、シーズン終盤にチーム全体が底上げされていることを願い、選手を信じて我慢し続けている。

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