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Jリーグ 10年前

頑固なまでにクソ真面目。「サッカー馬鹿一代」大分指揮官・田坂和昭の美学

text by ひぐらしひなつ photo by Getty Images

得失点差「-3」で6位をキープ!?

 8節を残して、現在6位。特筆すべきはその得失点差にある。「-3」でこの順位にいることの不思議を問うと、選手たちも「なんででしょうね」と苦笑する。

 開幕前から丁寧に組み立てるスタイルを培い、シーズン序盤のうちに、攻撃の形は作れるようになった。ただ、肝心のフィニッシュが決まらない。精度も強度も不足していた。攻撃陣個々への丁寧な指導を繰り返し、圧倒的な得点力不足を堅守で補いながら中位以上をキープする。

 得点できない試合が続くうちに、攻撃陣には焦りが、守備陣には疲労が見えはじめた。「焦って無理に攻めに出て、自分たちでバランスを崩してしまっていた」と、守備崩壊に至ったいくつかの試合を、主将にしてディフェンスリーダーの高木和道は振り返る。それでも多くの試合を僅差で勝ち、あるいは泥臭く引き分けに持ち込んで、勝ち点を稼いできた。それが今の大分だ。

 中断期間には、カンフル剤としての戦力補強も行った。ただ、新戦力・ラドンチッチを組み込むために、戦術変更も強いられる。「全員守備・全員攻撃」を信条としてきたチームに、攻撃に専念するメンバーがひとり入ることで、守備の規律が変わり、残りのメンバーの負担が増えた。

 その調整による労力とストレスを乗り越えながら、苦しい夏をしのいだ。前線から連動したプレスをかけたシーズン序盤とは一転、自陣に引いて守り、ラドンチッチ単独の強さで強引に得点を奪う。それでも田坂監督は、自らが「そんなのつまんない」と主張する単調なサッカーに陥らないよう、組織としての連動性を模索し続けた。

 夏が終わるとともに、チームは再び運動量を増やし、前線から積極的にボールを奪いに行く戦術へと切り替えた。「そのほうがチームに勢いがつくのではないかと、心理的な部分での影響も計算した」と田坂監督。同時にブラジル人DFダニエルを獲得し、中盤の補強を図ってもいる。

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