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Jリーグ 10年前

川崎F・小林悠が“エース”と呼ばれる日――。日本代表FWの才能を開花させた大久保・ジュニーニョの存在感

text by いしかわ ごう photo by Getty Images

大久保からの圧倒的な刺激

 中村憲剛からのスルーパスに反応した大久保嘉人が、冷静にゴールネットを揺らしたのである。2試合の出場停止明けから復帰したばかりの大久保だったが、試合勘の欠如を感じさせることなく、終わってみれば10年ぶりのハットリックを達成。

 とりわけ3点目は圧巻で、ヘディングでボールを浮かすと、対面した相手に体を当てられながらも突き進み、ニアサイドの頭上を豪快に撃ち抜いてみせた。試合中継したテレビカメラが、このゴ-ルシーンを信じられないものを見たように微笑む小林の表情をしばらく映していたのだが、後日、本人に聞くと、こんな感想を述べていた。

「3点目なんか、客観的に見ても相当に凄いですよ。相手に身体をぶつけながら、全くブレていない。身体とボールが一緒になっていた。それでいてシュートも完璧だった。凄すぎて、自分には参考にできないですね」

 脱帽するしかないほどの活躍を見せる“エース”ストライカーが味方にいる。そんな大久保嘉人の後ろ姿は、小林に大きな刺激となっている。

 そしてもう一人、小林の成長を語る上で欠かせないストライカーがいる。彼が川崎フロンターレに入団した2010年、絶対的なストライカーとして君臨していたブラジル人・ジュニーニョである。

 Jリーグ得点王にも輝いたことのあるこの点取り屋は、中村憲剛とともにチームの攻撃陣をけん引し続けていた王様だった。シーズン1年目の多くをリハビリに費やしていた小林にとっては、チームメートとはいえ、あまりに偉大で遠い存在でもあった。

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