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“出来過ぎ”でない躍進。ポゼッション&プレッシング。サウサンプトン流を昇華させた新監督と新戦力

text by 山中忍 photo by Getty Images

リーグ最少の失点「10」。守備の安定性が向上

 デヤン・ロブレンが抜けた最終ライン中央の穴は、前任者と同じく、相棒のジョゼ・フォンテと控えCBの吉田麻也を集中力の高さと対人の強さで凌ぐトビー・アルデルワイレルトで埋められた。

 新左SBのライアン・バートランドは、オーバーラップの勢いでは前任の19歳ルーク・ショーに劣るが、堅実な守りとCL出場を含む経験値で勝る25歳だ。

 加えて、過去2シーズンは絶対的な守護神が不在だった自軍ゴール前には、反射神経を兼備した巨漢の新GKフレイザー・フォースターがいる。

 モルガン・シュナイデルランの放出を頑に拒み、ビクトル・ワニアマには強豪の触手が伸びなかったことから中盤の盾は健在。クーマンが前監督ほどはラインを押し上げないこともあり、守備の安定性向上は想像に難くなかった。

 実際、14節終了時点での失点数「10」はリーグ最少。今季最多の3点を奪われたシティ戦前には、リーグ最多の「275」タックルに成功している事実がメディアで指摘された。

 枠内への被シュート数もリーグ最少の「25」。つまり、ポゼッションを大切にしながら攻撃を仕掛け、失ったボールは素早く奪い返すことで危機を未然に防いで再び攻撃に転じるという、「サウサンプトン流」のサッカーができていると理解できる。

 表面的には完敗のシティ戦にしても、内容は最終スコアほど一方的ではなかった。中盤の策士でもあるシュナイデルランは、巧妙な浮き球であわや先制点というチャンスを演出。

 タディッチのドリブルは、エリアキム・マンガラのファウルを誘って退場に追いやった。敵が10人になった後の2失点は反省材料だが、攻守の中核であるシュナイデルランが怪我で後半のピッチにいなかった影響もあったはずだ。

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