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ダシに使われたオシム氏。元通訳が見た、代表後任監督をめぐるボスニアと日本メディアによる空砲の撃ち合いと虚報

text by 千田善 photo by Getty Images

オシム氏を知る筆者から見ればあり得ない発言

ダシに使われたオシム氏。元通訳が見た、代表後任監督をめぐるボスニアと日本メディアによる空砲の撃ち合いと虚報
霜田正浩技術委員長とアマル氏は旧知の間柄【写真:Getty Images】

 まず、霜田委員長が元ジェフ千葉監督のアマル氏(オシムさんの息子)とコンタクトを取るのに「ある日本人関係者の手引き」というところが間違い。霜田委員長は数年にわたりジェフ千葉のコーチを務めており、アマル氏が監督をしているときのチームスタッフ。「手引き」なんかなくとも、この2人は旧知の間柄だ。

 オシムさん本人に話をするのにアマル氏経由というのもおかしい。アマルさんは現在、カタールのクラブチームの監督で、サラエボには住んでいない。霜田委員長はまずカタールに電話して、アマル氏がカタールからサラエボに電話して、というルート(これが「手引き」か?)を取ることになるが、「ある関係者」はアマル氏の現職を知らないほど現場にうとい方なのかもしれない。

 また「オシム氏に推薦してもらった」というのもウソ。先述したように、オシムさんはそういうアドバイスをする人間ではない。したがって、「3人に絞られた。うち2人はオシム氏の人脈」というのも真っ赤な大ウソである。

 この記事が元になってA社が「スーシッチとハリルホジッチが競合」と書いたのか、それともA社の記事を読んだ「ある関係者」がこの媒体の記者にこっそりと「手引き」「人脈」情報を与えたのか、前後関係は不明。

 今回の件に関して私はオシムさんの元通訳ということで、オシムさんが関係のないところで、しかも事実でないことまで使ってダシにされていて、大きな憤りを感じる。私はジャーナリズム論を教えている立場でもあるが、マスコミには要注意と強く言っておきたい。

【了】

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