誰のためのファイナンシャルフェアプレーか?

発売中『欧州フットボール批評special issue03』では、規定の緩和が決まったファイナンシャルフェアプレー(FFP)制度の功罪について、制度の導入から改正が決定するまでの経緯を振り返りながら検証している。なぜこのタイミングでルール変更がなされることになったのか。一部抜粋して掲載する。

2015年09月01日(Tue)12時01分配信

text by 小川由紀子 photo Getty Images
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クラブからの苦情が続出していたFFP

誰のためのファイナンシャルフェアプレーか?
PSGのナセル・アル・ハライフィ会長【写真:Getty Images】

 去る7月1日の会合で、UEFAは、ファイナンシャルフェアプレー(FFP)の規定を緩和することを決定した。さっそく恩恵を受けたのは、PSGとマンチェスター・シティ。今後、収支のバランスを正常化するという明確な運営方針を示したことで、昨季課せられた6000万ユーロの罰金、総サラリー額の凍結、移籍市場での予算の制限、チャンピオンズリーグ出場メンバーを25人から21人に削減……といった処罰を今季は免除され、同時に確実に売り上げを見込めるという事業プランを遵守することを条件に、メルカートで使用できる金額の制限も事実上撤廃された形となった。

 今回の緩和策では、あらたにボランタリー・アグリーメント(VA)という条項も追加された。これは資金を投じるオーナー側が説得力のあるビジネスプランを提示できるのであれば、短い期間でなら、赤字の許容額を超えて選手の移籍金やサラリーに資金を投じることが認められるというもの。ただし、4年以内に収支をイーブンにすることが必須条件だ。

 2011年夏に導入され、2013-14シーズンから実質的に施行されたこのレギュレーション、FFPが、なぜこの時期に見直されることになったのか。最大の理由は、クラブからの苦情が噴出したことだ。実際、それらのクラブは導入については賛成していたわけだが、実際に施行されてみると、なにかと都合の悪い点に気づいた、というわけだ。

 たとえばマンチェスター・シティでは、08-09シーズンにタイの元首相タクシンから実権を買い取ったアブダビ投資グループが、豊富な財源を後ろ盾にヤヤ・トゥーレ、アグエロ、テベスら、ワールドクラスのトップスター選手を集め、収支は一気に1億2100万ポンドマイナスにまで傾いた。

 しかし彼らにしてみれば、これは「投資」である。そして投資とは、一時的に大金を注ぎ込んで、その後、機が熟したときに見返りを手に入れるというもの。「現在のFFPのルール下では、事実上投資は不可能。それはおかしい」と彼らはUEFAに是正を申し入れた。

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