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日本代表 9年前

【識者の視点】ハリルJは何が進化しているのか? 大量点を生んだ確かな前進

text by 河治良幸 photo by Getty Images

指揮官が植え付けた“意識”

 3月に就任してから、ハリルホジッチ監督は攻守の切り替わりを早くすること、“デュエル”(球際で厳しく寄せる強さ)を高めること、安易にショートパスをつながず、1つ先を見る意識などを選手に求め、そして「日本代表はディフェンスの裏を狙う意識が不足している」と語る通り、縦に速く攻める意識をかなり強く植え付けた。

 短い代表合宿の中でミーティングを重ね、練習で徹底した成果は確かに選手のプレーとして表れたが、一方で対戦相手を見て選手たちが判断するという、トップレベルでは当たり前の要素が不足した。

 スコアレスドローに終わったシンガポール戦は確かに数多くあったチャンスの1つがゴールになっていれば勝ち点3を得られたわけだが、相手の守備をゴール前で外したシーンを作り出せなかったことは明らかな問題だった。

 カンボジア戦はシンガポール戦と似た状況になりながら、引いて守る相手に対してミドルシュートを打つ意識を強めたことに加え、ただ縦に急ぐことはせず、中央と左右のサイドに展開して相手に揺さぶりをかけるという基本的ではあるがシンガポール戦で欠けていた工程を増やし、前半は右サイド中心、後半は左サイドを中心に相手の薄いところを攻めるイメージをチームで共有していた。

 そうした攻撃の進歩が3得点につながったのは確かだが、ホームの整ったピッチにしては左右に振り、中にリターンするパススピードが遅く、相手のディフェンスを剥がしきれない要因になっていたことは1つの課題だと考えられる。

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