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Jリーグ 9年前

本当の意味での「ウルトラマン」へ。松本山雅のホープ、前田直輝が開花させる“救世主”の力

text by 藤江直人 photo by Getty Images

急成長を遂げ、U-22日本代表にも招集

 ベルマーレ戦の前日練習を終えた直後。岩上の欠場を受けて、何人か選手たちが自主的に居残ってパターンを確認したトリックプレーのひとつが鮮やかに決まった。

「けっこう距離があったんですけど、オビナと僕のシュート力を信じてくれたので」

 ちょっぴり笑顔を浮かべながら、後半に2ゴールを奪い、勝利と通算3度目の天皇杯4回戦進出をもぎ取る呼び水となった殊勲の同点ゴールを前田はこう振り返る。

「(岩上)祐三君が出ないということで、フリーキックにクッションを入れなきゃいけないとなって。ちょっと緩いかなと思ったんですけど、タイミングがずれたんですかね。素晴らしいシュートとは言えないですけど、とりあえず入ってよかった。たとえ失点しても、そこからの10分、20分が大事だと話していたので」

 ファーストステージでは1試合をリザーブで終えただけで、残る16試合すべてで初体験のJ1のピッチに立ってきた。第6節以降はコンスタントに先発にも名前を連ね、右サイドからカットインして左足を振り抜く最強のパターンで2つのゴールも決めた。

 急成長を遂げている軌跡が評価されたのだろう。7月1日に行われたU‐22コスタリカ代表との国際親善試合。U‐22日本代表に初めて招集された前田は、先発にも名前を連ねて後半9分までプレーした。

 代表候補合宿に呼んだことのある前田に対して、U‐22日本代表を率いる手倉森誠監督は「変わったな」と声をかけたという。

 175cm、66kgのボディに搭載された潜在能力が解き放たれつつある過程で、反町監督は「最近はカラータイマーが鳴らなくなった」と振り返ったことがある。

「本人も自覚していたんだろうね。プレーに関与する時間が増えてきたし、その結果として代表にも選ばれたことは、直輝にとっても大きな自信になったんじゃないかな」

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