いい意味で裏切った金崎の補強
秋の気配が漂ってくると、Jクラブの強化責任者はシーズン終盤戦の戦いを見守りながら、次のシーズンへ向けた準備を始める。現有戦力を見極め、移籍市場をにらみながら補強ポイントをあれこれ思案する。
残り1節となったセカンドステージで2位につけている鹿島アントラーズも、もちろん例外ではない。在任20年のスペシャリスト、鈴木満取締役強化部長は「来シーズンへ向けた編成をいろいろと考えている」と公言してはばからない一方で、嬉しい悲鳴も漏らしている。
「そういうときにナビスコカップの決勝戦を見ると、そんなにいろいろとやらなくてもいいかな、と思うくらい選手たちは頑張ってくれた。実際、ナビスコを取ったことによって、得られたものがものすごくある。ナビスコの前と後とを比較すると、いまのチームはワンランク上に来ている。本当はもうちょっとシーズンがあるといいんだけど、2009年シーズンを最後にリーグ戦のタイトルは取れていないわけだから、本当に強いチームにしていかなきゃいけない」
連覇を狙ったガンバ大阪を3対0で一蹴し、約3年に及んだ無冠の時間に終止符を打った10月31日のナビスコカップ制覇は、アントラーズに常勝軍団と呼ばれてきた自信と誇りを取り戻させた。
そして、来シーズンも継続してタイトル争いに絡み続けていくための最初の一手が、ナビスコカップ決勝の直前に打たれている。鈴木強化部長が明かす。
「ポルトガルのポルティモネンセへ、ムウ(金崎夢生)を完全移籍で獲得するオファーを出しました」
来年1月31日までの期限付き移籍で、金崎がポルティモネンセから加わったのは2月10日。中盤のサイドの選手層を厚くする意味合いが込められた緊急補強は、鈴木強化部長をはじめとするフロントの期待をいい意味で裏切った。