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その時、パリでは何が起きていたのか? スタジアムは騒然、街は惨劇…現地記者が見た同時テロの現場

text by 小川由紀子 photo by Yukiko Ogawa

ユーロ開催に五輪立候補を控えるフランス

 ただ、約6万5000人が集っていたスタジアムでの事件のわりには、対応はスムースだったように思う。

 警察は、最初の爆発音があった時点で事件性を察知し、スタジアムのすべてのゲートを封鎖。誰も中へ行き来できない状況をつくった。

 そしていつものように、帰りの混雑を避けて早めに会場を出る人が出始める試合終了15~20分前になってはじめてゲートを開き、出て行く人だけが通過できるようにした。

 パニック状態を避けるべく、警察は外で起きた事件が観衆の耳に入らないよう配慮し、さらに密集地帯では携帯電話の電波が通じにくいという不便さも、外部の者からの連絡で不安を助長させるのを防いだ。

 選手たちに関しては、このあとさらに深夜1時すぎまでロッカールームに待機させ、完全に安全を確認した後で、スタジアムから退避させた。

 フランスで、スポーツの会場がテロの標的に狙われたのは今回が初めてだという。来年にはユーロ開催を控え、さらには2024年の五輪開催地にも立候補しているフランスにとって、スポーツ会場での警備は重大な懸念事項だ。

 ノエル・ル・グラエFFF会長は「爆発はいくら対処してもどこででも起こりうる」と警備の難しさを語ったが、今回の事件を機に、爆発物をより高い精度で感知できる機器の導入などを検討していくという。

 13日のドイツ戦の直後には、17日のウェンブリースタジアムでのイングランド戦の中止も検討されたが、こちらはひとまず予定通り決行することが、翌14日に発表された。

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