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その時、パリでは何が起きていたのか? スタジアムは騒然、街は惨劇…現地記者が見た同時テロの現場

世界中を震撼させているフランス・パリで発生した同時多発テロ。この日、スタッド・ド・フランスではフランス対ドイツの親善試合が行われており、スタジアムも事件の一報により不安に包まれていた。そして、パリ市内やコンサート会場では地獄絵巻とも言える惨劇が起きていた。

text by 小川由紀子 photo by Yukiko Ogawa

「爆竹だと思った」。スタジアムに響いた爆発音

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スタジアムも事件の一報により不安に包まれていた【写真:小川由紀子】

 バーーン!

 という爆発音が轟いたのは、前半の中盤頃。少し間をおいて、2発目が続いた。一部の観客がざわつき、ボールを持っていた左SBのエブラも一瞬動きを止めたが、試合は何事もなかったように進んだ。

 11月13日、パリ郊外の国立競技場スタッド・ド・フランスで行なわれた親善試合、フランス対ドイツ戦の最中の出来事だ。その後の報道で、1発目は21時17分、2発目は19分だったことが判明。さらにハーフタイムの間にも、3発目が爆発していた。

 その時点では、スタジアム内には落ち着きが保たれていた。筆者も「ずいぶん大きな音だったな」とは思ったが、サッカーの試合のときには爆竹が鳴ることがよくある。

 今回もそのたぐいだろうと思っていたし、プレス席にも変わった動きはなかった。後になってスタジアムから出て来た観客に向けられたインタビューを見ても、みな「爆竹だと思った」と話していた。

 誰も、よもやこのような深刻な事件が起こっていたとは思っていなかった。今回の多発テロでは、最初の爆発地点がスタッド・ド・フランス周辺だったこともあり、この時にはまだテレビのニュースにも取り上げられていなかったのだ。

 しかし、たまたまハーフタイムにプレスル―ムで雑談していたのがAFPの記者で、さすがは世界有数のニュースエージェント、早耳の彼が「さっきの音、聞いただろう? この近くで爆発があったらしい」と言いながら席に戻って行ったとき、なにかひっかかるものを感じた。

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