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アジア 8年前

“多文化共生”を体現した豪州U-23代表。五輪出場は逃すも“オリルーズが”示した吉兆

text by 植松久隆 photo by Getty Images

オーストラリアの特性を象徴したチーム構成

フランス統合の象徴としてしばしば引き合いに出される1998年W杯のフランス代表チーム
フランス統合の象徴としてしばしば引き合いに出される1998年W杯のフランス代表チーム【写真:Getty Images】

 今回のチームには、今までのどの豪州の世代別代表チーム以上に、それがよく表われていた。具体的に言えば、その特性とはこの国の「多文化共生社会の体現」とでも言えようか。

 サッカーの歴史を紐解けば、急速に台頭する国の代表チームは、概して複数民族が暮らす国や移民国家など様々な民族がミックスされた国であるというケースが多い。

 80年代後半から90年代にかけて欧州を席巻したオレンジ軍団のオランダ代表、シャンパン・サッカーの衰退後の雌伏の時期を乗り越えて復活した90年代後半のフランス代表などの例もしかり。

 サッカー新興国のリーグの中でもっとも元気なMLSを有するアメリカ代表も、かなり人種が混交している。

 そんな中でもやはり一番の例は、自国開催を制した98年W杯のフランス代表だろう。白人のいわゆる“伝統的な”フランス人だけではなく、アルジェリア系のジダン、テュラムやカランブーなどカリブやアフリカ由来の黒人選手が程よくミックスされたチームは、旧植民地からの移民を多く受け入れてきた現代のフランスという国を体現していた。

 そのチームが勝ち上がるにつれ、人種や出自を超えた「フランス」としての連帯感が高まっていったのが、海外から観戦する身にも伝わってくる快進撃だった。

 少し脱線したが、ようは、豪州にもかつてのフランスのようなチームの誕生の可能性があるということ。なぜならば、豪州には世界有数の成功例とされる多文化共生主義(マルチカルチュラリズム)が、白豪主義からの一大転換を経てじっくりと積み上げられ、しっかりと根付いている。

 サッカルーズは、伝統的に東欧系(特に旧ユーゴ系)が有力選手を輩出してきた。伝統的にはアングロ・サクソン系と東欧系のミックスがメインだったチーム構成は、ここ最近になって、一気に“国際化”が進んだ。見た目から異なるアフリカ系や中東系、そしてアジア系の代表選手が少しずつでも存在感を見せるようになってきた。

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