フットボールチャンネル

女子サッカー発展の起爆剤は“女性らしさ”? 男女の違いを無視した「平等」による弊害

text by 鈴木肇 photo by Getty Images

競技規則を男性と同一にする必要はあるか

 とはいえ、ピッチ外の点が変わっても、肝心の競技自体に娯楽性が感じられなければ人気は一時的なもので終わってしまう恐れがある。そこで2点目に挙げたいのが、競技規則の変更だ。女性の運動面や身体面を考慮したルールに改正することが必要だと考える。具体的にはボールサイズの変更や試合時間の短縮、ハード面で困難かもしれないがゴールサイズやピッチコートの縮小化だ。

 1895年にイングランドで世界最初の女子サッカークラブが誕生して以来、女子サッカーは今日まで少しずつではあるが発展してきたわけだが、ルールは男子と同じではなかった。日本では、全日本女子サッカー選手権(2012年より皇后杯に名称変更)も、1980年の第1回大会と続く第2回大会では8人制で行われ、試合時間は25分ハーフ、使用ボールは4号球、ゴールはジュニア用のものを使用していた。

 女子サッカーの大きな転機となったのが、1986年にメキシコシティで開かれたFIFA総会だ。ノルウェーサッカー協会を代表して出席したエレン・ヴィレ氏が「人類の半数は女性である。FIFAは女子サッカーにもっと力を入れるべきだ」と演説し、女子W杯の開催、五輪種目への女子サッカーの追加、男女同一ルールの適用を提案した。女子の国際大会開催を訴えたのは良かったが、同一ルールの適用に関しては、女性と男性の違いを無視してしまった結果のように思う。

 バレーボールでは、1999年のW杯より、1セット15点でサーブ権を持つチームがラリーに勝った場合のみ点数が入るサイドアウト制から、サーブ権の有無にかかわらず点数が入る1セット25点(第5セットのみ15点制)のラリーポイント制に変わった。

 変更の理由のひとつが、選手の体力的な問題だ。変更前はサーブ権のある方にしか点が入らず、決着がつかないまま試合時間が長くなるケースが少なくなかった。だが、ルール変更の結果、1試合ごとの試合平均時間は約20分短縮され、そのおかげで選手の体力が持続し、選手寿命が延びるという効果をもたらした。実際、30歳を過ぎてもプレーを続けた選手のなかには「長く現役を続けられたのはラリーポイント制のおかげ」と話している選手もいる(Sports Graphic Number PLUS 2006年12月号『【永久保存版】全日本バレーのすべて』より)。

1 2 3 4

KANZENからのお知らせ

scroll top