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日本代表 8年前

【識者の眼】ハリルが警鐘を鳴らすシリアの“時間稼ぎ”。ゲームを“壊されない”ために必要な状況判断

text by 河治良幸 photo by Getty Images

警戒すべき危険なスライディングタックル

 シリアは屈強なフィジカルを備え、守備はもちろん攻撃でも、わざと体を相手にぶつけ、そこで優勢になったところからチャンスを作る意識が高い。たとえば10月の試合では、前半5分、シリアの右SBが日本側の深いところにロングボールを入れてきた。わざとDFラインの裏でボールを弾ませ、そこからのイーブンボールに競り勝つ形でシュートに持ち込もうとしたのだ。

 その場面はGKの西川周作が槙野智章をカバーして、アルマワズと交錯しながらもパンチングでボールをかき出したが、ここで一瞬でも対応が遅れていたらシリアが先制し、日本は中東の地で厳しい状況に陥っていたかもしれない。

 さらに吉田麻也のフィードをシリアのDFがクリアすると、セカンドボールを山口蛍が拾おうとしたが、FWマルキのチャージでバランスを崩され、そのまま日本のペナルティエリアまで持ち込まれた場面もあり、日本はギリギリの対応を迫られた。

 シリアの選手たちは、そうしたイーブンボールではボールよりまず体に当たって来る傾向が強い。しかもハリルホジッチ監督が認めるように、いざゴール前に運んだ時の決定力が高いため、時間帯に関係なくイーブンなシチュエーションでは常にシリアのチャージに対する注意が必要になる。

 日本は1タッチ、2タッチをベースとした素早く正確なパスワークでなるべくシリアのフィジカルな戦いに乗らずに試合を運びたいが、相手陣内では競り合いやコンタクトプレーは避けることができない。そこで警戒しないといけないのが危険なスライディングタックルだ。

 昨年の試合では、左SBの長友佑都が縦パスを出し、前方の原口元気が後ろを向きながらボールを受けようとすると、斜め後方からアル・シュブリが原口の足ごと刈り取るようなスライディングタックルを仕掛けてきた。さらに長友が左サイドで1人を突破すると、2人目が果敢に滑り込んでくるシーンもあった。

 シリア陣内のロングボールを巡っては、シリアの選手たちは体を浴びせかけるように競ってくる。前回のシリア戦では大抵がシリアのファウルになっていたが、レフェリーの判定によっては空中戦のこぼれ球からカウンターを食らう危険もある。

 加えてシリアの選手は、日本の選手がコンタクトした際には大げさに倒れて少しでも判定を有利にしようとしていた。

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