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ネイマールがタトゥーを入れる意味。ブラジルの至宝が両足に刻んだ信念“大胆さと喜び”【フットボールと言葉】

シリーズ:フットボールと言葉 text by 竹澤哲

「ネイマールは100年に一人の逸材」

ネイマール
10代のころからブラジル代表でも中心選手となっている【写真:Getty Images】

 それからわずか1年とはいえ、ネイマールを取り巻く環境は大きく変わってきていた。ワールドカップ南ア大会直後の2010年8月10日に行われたアメリカ合衆国との親善試合でA代表デビューしたネイマールは、それ以来セレソンの一員として、不可欠な存在となり、ネイマールの名は世界中に知れ渡った。

 そうなると、1度はチェルシーのオファーを断ったものの、サントスと契約を打ち切るのはもはや時間の問題だと言われるようになっていた。それだけに2011年11月9日に会見を開き発表された、サントスとの契約延長は、ブラジル中に大きな驚きを与えたのだった。

 翌日の新聞記事の大半は、『ネイマールよ、よくぞ留まった』という決定を歓迎した論調であった。しかしその一方で、さらにサントスで甘やかされることでネイマールの成長を遅らせてしまうのではないかと危惧する声もあった。

 記者会見の翌日、詳しい事情を知るために、ルイス・アウヴァロ会長を訪ねた。会長はネイマールというブラジルの至宝をヨーロッパへ渡さなかったことで、一夜にして、一躍時の人となっていた。当然、取材も殺到していたはずだったが、事前にアポをとっていたことも幸いし、また日本から来たということで、しっかりと時間を割いてくれた。

 当初は、冬に行われるクラブワールドカップについて尋ねる予定だったが、ネイマールの契約延長についてが質問の中心となった。それに対して会長は例えを出しながら、わかりやすく説明してくれた。

「ブラジルはこれまで鉄鉱石や大豆と行った原料を輸出していた。しかし時代は変わり、現在は自動車、鉄板、加工食品を輸出するようになった。フットボールにおいては若いタレントを輸出し続けている。しかし経済状況も変わったのだから、人々は考え方を変える必要がある。

 ネイマールは100年に一人の逸材だ。2014年のワールドカップを成功させるためにも、愛国心の象徴となるような選手を流出させてはいけない。それはもはやクラブの問題ではなく国家の問題だ」

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