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ネイマールがタトゥーを入れる意味。ブラジルの至宝が両足に刻んだ信念“大胆さと喜び”【フットボールと言葉】

シリーズ:フットボールと言葉 text by 竹澤哲

ペレまでもが慰留したアイドル

 実はその時よりも1年ほど前の2010年8月、まだ18歳のネイマールに対して、チェルシーから巨額のオファーがされたことがあった。いよいよネイマールはヨーロッパへ行くのかと大きな話題になった。

 しかしこの時は、ペレまでもが説得にあたり、「アイルトン・セナ亡きブラジルには君のようなアイドルの存在が絶対に必要だ。私もサントスで育ち、世界から認められた」と言って説得し、結局ネイマールは断っている。

 選手として2度、また監督としても2度のワールドカップ優勝経験を持つブラジルフットボール界の重鎮、マリオ・ザガロも当時このように発言していた。

「ネイマールは身体的にも、まだイングランドのようなところでプレーするのはよくない。彼は飛び抜けた才能を持った選手であるが、もう少し身体的にも成長し、選手としても成熟してからの方がいいだろう。彼が21歳になった時でも遅くはない。それまでは、ブラジルで成長するのがよいのだ」

 ザガロはヨーロッパスタイルをワールドカップ前に学んでおいた方がよいが、18歳で渡るのはまだ時期尚早であるという考えだった。

 しかしその決定が、ネイマールを甘やかしてしまうことにもなった。Tシャツに書かれたメッセージを見るまでもなくすでにこの頃からサントスにおいて、ネイマールは王様ともいえる待遇を受けていたのだ。

 そのことを表す端的な出来事は、チェルシーからのオファーを断った直後に起きている。

 2010年9月15日に行われたブラジル全国選手権の対アトレチコ・ゴイアニエンセ戦、3対2とリードされているときに、サントスにPKが与えられた。この時ドリヴァウ・ジュニア監督はネイマールではなく、他の選手に蹴るように命じた。そのことで腹を立てたネイマールは監督と激しく言い争ったのだ。

 後日、クラブ側はネイマールに出場停止1日の処分を出そうとすると、監督はそれ以上の厳罰を望んだ。すると、クラブはネイマールには罰則を与えず、監督を解任してしまったのだ。

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