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Jリーグ 8年前

福岡、J1復帰後初勝利の舞台裏。存亡危機からの復活劇。“身の丈補強策”を生む経営会議

text by 藤江直人 photo by Getty Images

J2で積み上げた2システムの併用

 2015シーズンから初めてJクラブを指揮した井原監督は、開幕前のキャンプでアビスパに「4‐4‐2」と「3‐4‐3」の両システムを徹底して叩き込んだ。

 迎えたJ2での戦い。4バックで連敗を喫した井原監督は、コンサドーレ札幌との第3節から3バックに移行。まずは負けないサッカーを標榜し、実際に第4節から11試合連続で無敗をマークさせることで、選手たちに自信を取り戻させている。

 同時進行で「4‐4‐2」システムを成熟させた日々。ジュビロ戦を4バックで勝利した8月15日に「J1昇格を確信した」と、実際に昇格を勝ち取った直後に指揮官は打ち明けている。

 安定感とリスクを冒すスピリットを共存させたチーム――。井原監督の真面目な正確を反映させるように、ゆっくりと、かつ丁寧に作り上げられてきた新生アビスパを表現すればこうなるだろうか。

 FC東京戦における4バックへの移行は、つまり安定感を優先させた昨シーズンとは逆の流れになる。もっとも、勝敗を度外視してゴールを追い求めればそれは責任放棄であり、本末転倒となる。

 全国的に強風が吹き荒れた4月29日は、味の素スタジアムも例外ではなかった。前半が風下になった段階で、リスクを冒すという大前提のもとで、前後半で別々のゲームプランを策定している。

 前線へのロングボールを多用した前半の攻撃を、末吉はこう説明する。

「前半は相手のプレッシャーが強くて、前から来ていたので。そういう状況で無理につないでボールを失って、ショートカウンターを食らうよりも、まずは前から来る相手を裏返しにして、自分たちが押し込むサッカーをしようと。

 実際に後半は相手の運動量も落ちて、プレッシャーも弱まってきたので、自分たちが前を向ける回数も増えたところで今度はつないでいった。前半のように割り切ったサッカーもしていかないと勝ち点を拾えないと思うし、これからももっと、もっと賢く戦っていかないといけない」

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