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本田圭佑 8年前

ミラン、夢想に走った経営陣に踊らされ失墜。本田はサイドで戦術の肝に【15/16シーズン査定】

シリーズ:15/16シーズン査定 text by 神尾光臣 photo by Getty Images

スタメン11人は固定。バックアップは皆無

本田
右サイドで定位置を確保した本田圭佑【写真:Getty Images】

 まずミハイロビッチ監督は、ポゼッションサッカーよりもリアクション主体で結果を出してきた監督だ。強力なリーダーシップでチームに規律をもたらし、組織守備を成立させ、攻撃もショートカウンターを主体に整備する。そういうわけであるから、カウンター主体のスタイルに落ち着いたとしても仕方のない人選ではあったのである。

 ただ彼も、シーズン当初はベルルスコーニの意向に沿った戦術を取ろうとしていた。4-3-1-2のシステムのもとでのポゼッションである。ところがこれは、機能しなかった。中盤では繋げず、その状態ではトップ下も機能するはずもなく本田圭祐でもジャコモ・ボナベントゥーラでもいまひとつ。

 何よりサイドを中心に守備がもろすぎて、ポゼッションの成立どころではなくなった。そして第7節、ホームでナポリに0-4と大敗したところで指揮官はシステムに見切りをつけた。

 その結果、チームのシステムは4-3-3もしくは4-4-2へシフト。バランスのとれた固い守備組織をベースに、ショートカウンターで戦う。そこからミランは復調し、2月には上位にも肉薄するようになったから、この時点までは正しかったということになる。選手の力を引き出すための現実策に、一度彼らは到達していたのだ。

 戦術の肝は左右の両ウイングだった。守備では中盤のラインまで下がってサイドの数的優位を確保するとともに、攻撃ではサイドバックとの連動によりサイドから仕掛けのポイントを作る。左は個人技に加えて走力と運動量のあるボナベントゥーラが定着。右ではしばらく人材に困ったが、戦術面での要求をきちんとこなす本田が台頭した。

 中央ではユライ・クツカのサポート得てリッカルド・モントリーボが復調。FWではストライカーのカルロス・バッカのサポート役として、推進力を利して中盤と前線をつなぐエムバイエ・ニアンが結果を出し、11人はまとまったのである。またデビュー当時16歳のGKジャンルイジ・ドンナルンマが華々しい活躍を見せて、後方の守備を支えたことも、チームのムードをフレッシュなものにしていた。

 だがこの修正策には限界があった。バックアップが皆無だったのである。中盤では2000万ユーロをかけて補強されたはずのアンドレア・ベルトラッチがセントラルMFとしてもはまらない。前線ではヘルニアに苦しんだジェレミー・メネズのコンディションアップが遅れ、マリオ・バロテッリも全然成長しない。

 そしてニアンが交通事故を起こして戦線離脱し、変えがまったくないままカップ戦もフル稼働した本田とボナベントゥーラがスタミナ切れを起こしたところで、再びチームの勢いは衰えた。

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