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日本代表 8年前

手倉森J、五輪へラストサバイバル。仲間の想いを『託す者』と『託される者』の行方

text by 舩木渉 photo by Getty Images

指揮官も感服する「まとまり」。最後の決断は未来へのメッセージ

 今回の南アフリカ戦は、手倉森監督の言う「託す者」と「託される者」が自然とキーワードになっていた。五輪に出られるか、出られないかを決める試合でも不協和音は一切聞かれず、組織としてのまとまりが際立つチームだけに「今日の試合が終わったところで、より厳しい決断をしなければいけない状況になった。この世代、自分は余裕を振りまきながら肩に力を入れないよう、ニコニコしてやってきましたけど、ここからはちょっと厳しい顔にならないといけない」と手倉森監督の胸中も複雑だ。

 A代表も経験した浅野は語る。「どうなったとしても日本として戦うというのは変わらないと思いますし、監督も何度か言っていましたけど、『託される選手』と『託す選手』に分かれるだけであって、一つのチームに変わりない。メンバー(発表)までちょっとドキドキはありますけど、どういう結果になっても悔いはない」。おそらく他の選手も一様に同じことを考えているだろう。

 自ら手塩にかけて育ててきた“息子たち”の中から限られた選手を選ばなければならない監督の苦悩は想像に難くない。もはや身を削る思いだろう。それでも手倉森監督は若い選手たちにメッセージを発し続ける。

「“託す側”になった選手はここからA代表を目指すだけなんだという言葉をかけてきました。本当に将来の日本サッカーの可能性、希望というのを皆さんもこの世代から見出してくれればと思います」

 運命のメンバー発表は7月1日。サムライの魂を『託す者』、仲間の想いを『託される者』に分かれてしまうが、最後まで心一つにブラジルでの戦いに臨む。

(取材・文:舩木渉【松本】)

【了】

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