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EURO2016 8年前

あの涙から2年…グリーズマンはフランスの伝説になれるか。立ちはだかるは2人の“赤い悪魔”

text by 舩木渉 photo by Getty Images

16年前と今をつなぐデシャン。グリーズマンは伝説へ

ジダン
グリーズマンはプラティニやジダンに並ぶ伝説となれるか【写真:Getty Images】

 決勝の対戦相手はポルトガル。今大会序盤は苦戦したものの、手堅い戦いぶりでファイナルまで進んできた。

 フランスにとっては1975年以来41年間、10戦10勝と相性のいい国だ。直近では2015年9月に対戦し、マテュー・ヴァルビュエナのゴールで1-0の勝利を飾った。グリーズマンもこの試合に前半途中から出場している。

 だが、やはりフランス対ポルトガルで思い出されるのはEUR2000の準決勝だ。序盤の19分にヌーノ・ゴメスに先制の一発を許したフランスだったが、51分にティエリ・アンリのゴールで追いつくと、延長後半117分にジネディーヌ・ジダンがPKでゴールデンゴールを決めて競り勝った。

 劇的な試合展開もそうだが、両チームの構成も今大会とよく似た部分がある。2000年のフランス代表はジダンのチームだったが、パトリック・ヴィエラやエマニュエル・プティ、ディディエ・デシャン(のちの監督となる男である)のような“戦える”中盤の選手達が10番を背負ったピッチ上の王を支えていた。

 一方、2016年のフランス代表にも“戦える”中盤が揃っている。ポール・ポグバやブレイズ・マテュイディ、エンゴロ・カンテ、さらにムサ・シッソコといったフィジカル能力に長けた選手たちの献身的なサポートがグリーズマンの輝きを一層引き立てている。

 2つのチームに共通して言えるのは、組織としてのまとまりと完成度が非常に高い点だ。2000年のチームは1998年フランスW杯の優勝メンバーを踏襲していた。2016年のメンバーは一部の問題を抱えた選手達(カリム・ベンゼマとヴァルビュエナ)や反乱分子となりかねない数人(サミル・ナスリやハテム・ベン・アルファなど)を外したことで、ここ数年見られていなかった高い組織力を実現した。

 16年前の優勝を知るデシャン監督の功績も大きい。チーム内から不安要素を徹底的に排除し、負傷者を切る判断も非常に迅速だった。ピッチ外でとがった個が悪い意味で強調される場面は以前に比べて格段に少なくなっている。

 フランスの成功は16年ごとにやってくると揶揄されることもあるが、これだけ短いスパンで完成度の高いチームを作るのは非常に難しい。今大会はそういった意味で大きなチャンスであり、現代の“王”になったグリーズマンはフランス国民にとってかつてのプラティニやジダンのような存在になれる可能性を大いに秘めているのだ。

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