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EURO2016 8年前

フランス、優勝ならずも意義深かったEURO開催。テロを経験した国が取り戻した活気【現地レポート】

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

欧州で肩身の狭い思いをしてきたポルトガル

ファンゾーンにもポルトガルサポーターがつめかけた
ファンゾーンにもポルトガルサポーターがつめかけた【写真:Getty Images】

 ポルトガルの優勝が決まってスタンドの一角で狂喜乱舞するポルトガルサポーターを見た瞬間、パルク・デ・プランスでよく顔を合わせるポルトガルのラジオ局のマルコの言葉が、ふと甦った。

 PSGにロナウド移籍?の噂が立った頃、「ロナウドはポルトガルにとってどのような存在なのか?」と聞いたとき、彼が意外な言葉を返してきたのだ。

「ロナウドは、ポルトガルが唯一世界に向けて誇れる存在なんだ」

「ヨーロッパの中で、ポルトガルは見下された存在。経済的に貧しくて、EUの足を引っ張っていると思われている。僕らがEU から離脱してほしいと思っている人たちも大勢いる。そんな僕らが唯一世界に誇れるのが、ロナウドなんだ。ロナウドがポルトガル人であることが、僕らポルトガル人の誇りなんだよ」

 日本とポルトガルは歴史的にも縁が深いし、旅行に行ったら嫌いという人はまずいないほどポルトガルは素晴らしい国だから、「欧州で肩身の狭い思いをしている」という彼らの思いにはそれまで気がつかなかった。

 だから、ホスト国を破って欧州の歴史に名を刻んだことは、ひとつのサッカートーナメントに優勝したという事実以上に、彼らにとっては胸を張れる、意味のあることだったのだ。

 それに、自国優勝、という貴重な機会を逃したことは残念だったが、それでもこの大会が開催された意味はフランスにとってもものすごく大きかった。

 この大会中、ファンゾーンはどこも人々で埋まっていて、満員で中に入れずに警官隊とやりあう輩が出るほど盛況だった。

 単にビッグスクリーンで試合を見たいサッカーファンだけでなく、「フランスを応援するためにみんなで集まろう!」「盛り上ろう!」というポジティブな一体感が生まれていた。

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