オフトJが超えた一線。言語化による整理と規律の浸透。異端児ラモスとのバランス【西部の4-4-2戦術アナライズ】
2016年07月27日(水)10時19分配信
「ポジションをぐちゃぐちゃにするな、自由ではない」
オフト監督はディシプリンを要求している。日本語にすれば規律だが、規則そのものよりも規則を守ろうとする姿勢を指す。秩序のないサッカーが嫌いだったのだ。代表が急速に力をつけたのを目の当たりにしたメディアは「オフト・マジック」と書き立てたが、オフト自身は「ロジックだ」と反論している。
代表メンバーの核になっていたヴェルディ川崎は、南米サッカーの影響を強く受けていた。しかし、彼らに勝手にプレーさせてしまうと秩序がなくなる恐れがある。ロジックに基づいて段階を踏んで成長させたいオフトは、秩序のないプレーを排除したかったのだろう。
「ポジションをぐちゃぐちゃにするな、自由ではない」
オフト監督はよく選手にそう言っていた。例えば、MF右サイドの選手が左サイドまで移動してしまうのはNGだった。フィールドを縦に4分割した場合、右側2つのエリアは自由に動いていい。しかし、右から3つめ(左から2つめ)はダメ。流動的にポジションを変えるのではなく、ある程度固定化させた整然としたサッカーを指向している。このあたりはオランダ人らしい。
得点源の三浦知良に対しても「下がるな」と指示している。カズは数多くボールに触ってリズムをつかむタイプのFWで、ヴェルディでもそうしていた。中盤に引いてからドリブルで仕掛けていくプレーもよくやっていた。しかし、これも代表ではNG。運動量を増やしすぎると肝心のゴール前で「息切れする」というのがオフトの理屈である。
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