オフトJが超えた一線。言語化による整理と規律の浸透。異端児ラモスとのバランス【西部の4-4-2戦術アナライズ】

2016年07月27日(Wed)10時19分配信

シリーズ:西部の4-4-2戦術アナライズ
text by 西部謙司 photo Getty Images
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オフトvsラモス。対立から生まれたバランス

オフト監督(右)と衝突したラモス瑠偉(左)
オフト監督(右)と衝突したラモス瑠偉(左)【写真:Getty Images】

 一から十まで細かく言う監督ではない。その点ではヨーロッパの標準的な監督であり、“こうプレーしろ”ではなく“この結果を出せ”と言うタイプである。コンパクトにしろとは指示するが、どうやってコンパクトにするかは選手に委ねられていた。ただし、何か具体的な指示が出たときは絶対である。ブラジルでプロ経験のあるカズはこうした監督との関係をすんなり受け入れた。まともに衝突したのはラモスである。

 最終予選の段階でラモスは36歳。19歳で来日してから日本サッカーを支えてきたスタープレーヤーだった。所属の読売クラブ(ヴェルディ川崎)では1人のプレーヤーの枠を超えていて、柱谷によると「ラモスさんの言うことは全部通った」という存在である。ほぼ監督と言っていい。

 1つのチームに監督は2人いらない。当初、ラモスはオフト監督を認めていなかった。2人の考え方の違いで大きかったのは攻撃のアプローチだ。オフトは徹底したサイド攻撃を説いたが、ラモスは中央突破に固執していた。雑誌のインタビューにラモスの監督批判が載り、オフトはラモスを呼び出して弁解を迫っている。この会談はケンカ別れの危険もあったが、その後に2人の関係は急速に改善された。

 とはいえ、考え方の溝まで埋まったわけではなく、オフトは相変わらずサイド攻撃を強調し、中央でパスをもらえないラモスが苛立つような場面がよくあった。オフト監督は強い相手に対してサイドアタックのほうが有効と考えていたが、中央突破が不要とは思っていない。ただ、中央から攻めてもいいと言ってしまったら、おそらくそればかりになってしまう。

 ラモスのほうもサイドと中央のバランスが大事だと気づき、すべて中央というわけでもなくなった。互いに本当にやりたいことは違うのだが、監督のオフトがタテマエを崩さず、プレーメーカーのラモスはそれに合わせながらも中央突破のチャンスがあれば狙っていく。それでバランスがとれていた。

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